取材日:2017年8月29日
丸子中では、数学の授業で情熱あふれる授業が展開されていました。Wordファイルで作った学習カードを使ったシンプルな授業ですが、そこに生徒のやる気を生み出す独特の演出がありました。他にも、社会科や英語でそれぞれの先生が「てれたっち」を使って授業の工夫を模索中です。生徒の積極性も引き出す効果も感じられた「てれたっち」を使った授業をご紹介します。
「てれたっち」を使ってみていかがですか?
後藤先生丸子中には一体型の電子黒板が一台ありますが、使用する場合は教室まで持って行かなければなりません。前の授業でどの先生が使用しているか把握できない時や、離れた教室で使っている時など、10分の休み時間内で移動させ、しかもセッティングまで完了させるのはとてもたいへんでした。しかし、「てれたっち」が導入されてからは、その苦労が一変しました。機器のセッティングは誰でも簡単にできますし、キャリブレーション設定もあっという間です。
一体型電子黒板との違いは?
後藤先生我々教師には、一人一台のパソコンが支給されています。中学は教科専任制ですから、科目ごとに先生が入れ替わります。教室に「てれたっち」がセットされていれば、私たちは教材がセットされた自分のノートパソコンを教室に持っていくだけで済みます。キャリブレーション設定は一度行っておけば基本的に再設定する必要はないので、私たちは授業の準備に専念できます。これは、今まで使っていた一体型電子黒板ではできなかったことです。その点が一番大きな違いですね。
「てれたっち」を使った授業の反応はいかがでしたか?
後藤先生私は、授業で学習カードを使います。これは、その授業の内容をまとめたもので、「てれたっち」でもこの学習カードを効果的に使えないかと思いました。学習カードに記載してある問題などを表示して、授業時間内に把握させたいポイントを書き込んだり、特に注目してほしい点を拡大表示したりして、生徒たちがその日の授業に入り込みやすい仕掛けを行います。
後藤先生これは連立方程式の初期段階の授業です。まず、「今やるところはここだよ」というように部分的に表示して生徒の意識を集中させます。次に、もう一つの式に表示を切り替えました。拡大・縮小をうまく使えば並べて表示ができ、見比べることができます。もしペーパーだけの学習カードなら、生徒たちは机上のプリントをじっと見たまま顔を上げることはなく、生徒の表情を読み取ることができません。また、どうしても大きく見せたい部分がある場合は、模造紙などに手書きして黒板に貼っていましたがその準備は大変です。生徒が私の方を向いて授業を受けてくれれば、教師側も生徒の反応がわかりますし、生徒の積極性も出てくるようになりました。
なるほど、授業の反応もよりわかりやすくなりますね。
後藤先生「てれたっち」は、普段おとなしい生徒が発言に積極的になる不思議な力を持っていますね。実際に解答を「てれたっち」に書かせた時、普段の板書の授業では決して前に出てこない生徒が「僕も書きたい」と言って出てきました。
また、授業全体の流れがスムーズになりました。これは、生徒にも教師にも言えることです。時間を要していた部分を短縮できたり、生徒の言葉だけで発表していたものを実際に映して描いたりすると、授業のテンポが良くなります。授業内で時間の節約ができるので、生徒たちがじっくり考える時間が確保できるようになり、最後にまとめの時間も取れるのはありがたいです。さらに、「てれたっち」を使った授業のデータをパソコンに保存し、次の授業の冒頭で振り返ることもできます。
他にもどういう形で「てれたっち」を使っていらっしゃいますか?
後藤先生私は、学習カードの他にもGRAPESという数学ソフトを使っています。GRAPESを使うことによって、グラフの学習で動きを取り入れることができます。動きを出すことによって、生徒の理解が深まるだけではなく、生徒が見たものを言語化しやすくなる利点があると思います。例えば、電話料金がどのように増えていくかというグラフで、時間単位で増えていく場合と、途中まで無料という場合、どこで料金が逆転するかをグラフで示します。そこで、「70分通話をしたときはどれが最も安いかグラフで説明してみよう」という課題では、「てれたっち」とGRAPESを組み合わせて、授業を行いました。
これから「てれたっち」でやってみたいことはありますか?
後藤先生また、クラスの席替えは生徒にとって一つのイベントでもあります。私は、学活の時間にゲーム感覚でできる席替えツールを考案しました。数式でランダムな数値を発生させてランキングをつけて配置するものです。先生の一存で新たな席が決められていると思っている生徒もいるようなので、「そんなことはない」ことを「てれたっち」でみんなの前で見せたいと思います。席替えを決めるとなるとそれなりに時間がかかりますが、席替えツールならわずか1分程度で終わります。
教育現場のICT活用について、将来の展望について一言お願いします
後藤先生中学校の授業は、これからますます「対話的」になっていくと思います。それを様々な形で実現させてくれるのが、私はICTだと思います。ですから、授業における対話のツールの一つとして、「てれたっち」を上手く活用していきたいですね。生徒にしてみれば、自分が学習した「振り返り」にも使うことができ、周りの友達との意見の共有にも使えます。デジタルは形として残らないと言いますが、やり方次第で残せるはずです。それを教師が真剣に考え、生徒をエスコートしなければいけません。
小池指導主事今回、「てれたっち」という機器に出合いました。そして、後藤先生の授業を拝見しました。そこで感じたことは、後藤先生は単に機器を使いこなすだけではなく、生徒のことを思った授業スタイルの変革で、その熱意が伝わってきました。教師の中には、自分の形を長年続ける一方で不安を抱えながらも、何も着手できていない方も多くいます。後藤先生をはじめとする皆さんの実践によって、刺激を受けてもらえればと思います。ツール活用のメリットをお互いに共有し、より良い改善策が発見できることを期待します。