(開発秘話 前編)つながりやすさを追求した360(さんろくまる)コネクト搭載、無線LANルーター「WN-AX1167GR」

企画開発部 企画2課 谷下淳子 と 企画開発部 開発2課 寄田晋吾

(写真)左:企画開発部 企画2課 谷下淳子 と 右:企画開発部 開発2課 寄田晋吾

本年(2016年)に発売され、利用者の皆様からも大変好評を得ている無線LANルーター「WN-AX1167GR」。本商品は上下・左右・奥行き全方向360度に電波の死角を作らないようにI-O DATAが開発した「360(さんろくまる)コネクト」搭載の無線LAN(Wi-Fi)ルーターです。

今回は、その開発、企画に携わってきた企画開発部 開発2課 寄田晋吾と、企画開発部 企画2課の谷下淳子に同席してもらい、今までの経緯と本商品への思いを語ってもらいました。

無線LANルーターWN-AX1167GR

(写真)360コネクト WN-AX1167GR

360コネクト WN-AX1167GR  パッケージ

(写真)360コネクト WN-AX1167GR パッケージ

批評から気づかされた「つながりやすさ」の視点
360コネクトプロジェクトの誕生

数年前、とある雑誌のレビューで当社の無線LANルーターのスループット(転送速度)の数値が当社公表値より良くないとの指摘を受けました。もちろん開発時の計測では批評されているほど悪くありませんでした。そのレビューを受け、再度、社内で計測をしたところ、やはり当初調査と同じ結果で悪い数値ではありませんでした。

ここで一つの疑問が生まれました。それは、「なぜ、当社の評価結果と雑誌レビューがこれまでかけ離れてしまったか」ということです。同じ機材、同じ方法で測定を再現しても大きな差があるということは、商品の設置状況や対向機との位置関係による影響があるのではないかと考えました。

これまでにも商品からの電波の飛ぶ方向にある程度の偏りがあることがわかっていました。しかし社内の試験では無意識に、良い結果が出るように方向を調整したり、特性が分かっているから良い結果を出せていただけかもしれない。そのようなことを意識しなければ性能が発揮できない商品は、良い商品とは言えないのではいか?という考えに至りました。

そこで一歩立ち止まって、お客様が求めている「つながりやすさ」の視点をもっと深掘りする必要があるのではないかと感じたのです。

企画背景を語る 谷下

(写真)企画背景を語る 谷下

その原因を追求するために、まずは「アンテナ」(電波)にフォーカスを置きました。調査の過程で、アンテナはそれぞれの特性において、得意な方向と不得意な方向があることが明確になってきました。この特性をそのまま無線LANルーターに当てはめれば、電波の弱い所、強い所がある、つまり、つながりやすい所とつながりにくい所が生まれることになります。

もちろん電波の強い所を基準に無線LANルーターのアンテナや位置を調整して利用することもできます。ただ、それは最終的に、つながりやすさの調整をお客様に委ねることになります。お客様の手を煩わせ、知識や経験によって、つながりやすさに変化が出てしまう。それは「お客様にコツを掴んでいただかなければ使いこなせない難しい商品である」ということです。

私たちはそのコツを無くし、誰でも商品の性能を十分に発揮して使っていただけるものを提供しなくてはならないと考えています。

誰が利用しても家じゅうどこでもつながりやすい無線LANルーターをつくる。そのためにまずは「電波の改善を行う」ことが社内的なテーマとなり、これが360コネクトのプロジェクトへとつながっていったのです。

360コネクトを実現するアンテナの研究
ダイポールアンテナとF型アンテナ(PIFA)

調査の過程で再認識できたことは、市場で評価の高い無線LAN(Wi-Fi)ルーターは平均的に電波がどの方向でも良い結果が出ています。一方、不満がでるものは電波の強い偏りがありました。

その認識をもとに、アンテナはどのように電波を飛ばすと良いのか。その調査、研究を深めていくことになりました。どの方向にも性能がでるアンテナを考える。その考えを、実際、商品に落とし込みながらやっていこうとはじまったのがWN-AX1167GRです。

ダイポールアンテナとF型アンテナを説明する 寄田

(写真)ダイポールアンテナとF型アンテナを説明する 寄田

無線LANルーターに使われる代表的なアンテナは主に2つあります。その1つに、「ダイポールアンテナ」があります。Wi-Fi製品に使われているアンテナは、これをベースにカスタムしているケースが多いです。ダイポールアンテナは構造が簡単でつくりやすく、周りの部品の影響を受けにくい。また、比較的安価に製作できることがメリットです。

逆にデメリットは構造的にどうしても電波の飛ばない方向が発生してしまうことです。そのため、例えば、複数のアンテナを組み合わせて1本のアンテナでは飛ばない方向をもう1本のアンテナでカバーしたり、その調整をしたりしなければいけないということになります。

ダイポールアンテナの特徴

(図)ダイポールアンテナの特徴

もう一つはF型アンテナ(PIFA・・Planar Inverted F Antenna)です。デメリットは、形は複雑でつくりにくく、調整が難しい。周りの部品の影響も受けやすく、開発の手間もコストもかかります。ただ、電波の不得意な方向は比較的にないのがメリットです。

※実際には、単にPIFAであれば不得意な方向がないということではなく、アンテナの形状や配置などを十分に考慮して設計をしなくてはなりません。また理想的なアンテナを実現することは困難であり、完全に均一な特性が実現できているわけではありません。

F型アンテナの特徴

(図)F型アンテナの特徴

今回の360コネクトプロジェクトは「とにかく電波の飛ばない方向を減らそう」「誰もが簡単に扱え、家じゅうどこでもつながる無線LANルーター」を目指したものです。また、その後の様々な調査やシミュレーションからも、このF型アンテナ(PIFA)がベターであるという結論に至りました。「時間やコストがかかっても、このF型アンテナ(PIFA)にチャレンジしていく」ことを決め、研究・調査を継続しました。

後編へ続く

◎関連リンク
無線LANルーター「WN-AX1167GR」(商品ページ)
無線LANルーター「WN-AX1167GR」(特集ページ)
無線LANルーター「WN-AX1167GR」(購入ページ)

本記事の内容については、サポートのお問い合わせ対象外となります。予めご了承ください。

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