HFAS1 Developer Story
HFAS1 開発者ストーリー
[開発者のこだわり]
3年の歳月を費やし、数え切れない試作と試聴、試行錯誤の果てに誕生したfidata。 この一台に込めた「想い」と「こだわり」を聞く。
企画担当 北村 泰紀 |
ハードウェア設計担当 宮本 明也 |
設計デザイン担当 森田 伸一 |
ソフトウェア設計担当 源川 裕二 |
我々の“音への想い”を体現する一台となった。
企画担当
北村 泰紀
Yasunori Kitamura
アイ・オー・データ機器が「音」の世界にアプローチしたのは2000年。MP3プレーヤーを商品化したのが最初の一歩でした。
その後、バーチャルサラウンドスピーカーの商品化もおこなうなど、けっこう古くから実績はあったのです。
その後2005年頃には、AV機器などの相互ネットワーク接続を標準化するために発足した
DLNA(Digital Living Network Alliance)対応のサーバーを開発するなど、
当社が得意とするデジタル、ストレージ、ネットワークなどの技術を活かしたものづくりを継続してきました。
そして迎えたインターネットを通じて本格的に行われるようになったハイレゾ音源の配信。
私たちの技術を、オーディオの世界で活かしていける新たな時代の幕開けでした。
img/北村 泰紀 |
ご存知のように当社は、業務用・家庭用のネットワークストレージ(NAS)の開発では、自他ともに認める実績を残してきました。この技術が、ハイレゾ・オーディオ、しかもハイエンドの世界で果たして通用するのか。fidata HFAS1の開発は、デジタル技術をもってオーディオというアナログな世界、官能の世界に挑戦していく試みでした。 |
2012年に始まったfidataプロジェクトは、スタート間もなく大きな壁に突き当たりました。回路ひとつとってみても、理論的には同じ結果を得られるはずなのに部品配置や回路レイアウトによってもプレーヤーから出力される音に影響がある。それは私たちにとって驚きに満ちた世界でした。デジタルな発想だけでは到達できない世界に対し、私たちが行ったのは「ものづくりの原点に立ち帰る」こと。すなわち、カット&トライ、トライ&エラーを繰り返し、一歩一歩ノウハウを蓄積しながら前進していく方法でした。
img/ロケーション
筐体、素材、回路基板、回路パターン、部品、電源、入出力ポート・・・すべて「最高」の要素を求め、それらをオーディオセオリーに則って様々に組み合わせ、試作と試聴を繰り返しながら、改善と改良を加えていく。こうして2014年10月、オーディオ・ホームシアター展に出展した試作機は大きな期待をもって受け容れられました。そしてその後、さらに1年に及ぶチューニングを重ね、fidata HFAS1は完成の日を迎えたのです。
img/本体
HFAS1には、理想とする音への私たちのあらゆるノウハウが込められています。どうぞ試聴室で、その音をお聴きください。ハイレゾ・オーディオのための理想のネットワークオーディオサーバー、自負と自信をもってお届けできる一台が、ここにあります。 |
img/ロケーション |
img/村泰紀
一つひとつの部品の配置を変えながら追求した音質。
ハードウェア設計担当
宮本 明也
Akiya Miyamoto
プロジェクトのスタートから3年、ようやく商品化にこぎつけました。なぜそれほどまでに時間がかかったのか?
ひとえに、音へのこだわりでした。試作品を発表したのは2014年10月のオーディオ・ホームシアター展。
その後もチューニングを繰り返し、やっと納得いく音にたどり着けました。
img/電源 |
チューニング過程で、ハード面での大幅な見直しを断行しました。そのひとつが「電源」です。当初は1基の電源だったのですが、「回路ごとに独立した電源が必要ではないか」との仮説を立て検証したところ、明らかな違いが。回路理論では同じであるはずのものが、実際に試作・試聴した官能評価では大きな違いとなってくる――こうしたオーディオ商品開発の難しさに、あらゆるところで突き当たりました。 |
電源2基への増設と並行して行ったのが、回路基板の分離。ネットワークオーディオサーバーは、システム部とハードディスク(ストレージ)駆動部の2系統の回路から成り立っているのですが、ノイズ抑制の観点からこれらを分離。それぞれの回路基板の間に絶縁層を設けることで、完全にセパレートしました。また外部からの振動やハードディスクの駆動振動を抑えるために、基板を固定するネジ位置も考慮。取付けボスはM4の太いタイプを採用しました。部品もニチコンMUSE電解コンデンサをはじめハイグレード品を採用。その組み合わせや配置についても、試作・試聴を繰り返して決めていきました。
天板のアルミ材の厚みにもこだわりました。様々な厚みのもので試作しましたが、最終的に中高音域がしっかり鳴り、かつ低音とのバランスも優れた4ミリ厚のものを採用することに決定。理論で仮説を立て、試作し、耳で確かめる――そんな妥協を排した取り組みの中から生まれたHFAS1。この一台には、エンジニアとしての自負が詰め込まれています。
img/4ミリ厚天板
img/本明也
禁欲的なデザインに秘めた“和の心”と機能性。
設計デザイン担当
森田 伸一
Shinichi Morita
振動を抑制する高い剛性と、手にしたときのズシリとした充実感。
機能性と所有することの満足感――この両方を満たすことができるデザインをしたいと考えていました。
通常、板金や樹脂が用いられることが多いAV機器ですが、それらとは一線を画すものにしたいというのが、そもそものスタートでした。
img/森田伸一 |
もうひとつは、この会社の本拠地である「古都・金沢」ならではの「和」のテイストを醸し出すこと。デコラティブな自己主張とは正反対の、極限まで装飾をそぎ落とした後に現れる「美」。そういう世界を実現できないか、と。こうした考えがベースとなって、HFAS1のデザインは生まれました。 |
例えば、筐体の表面板と側板、側板と裏面板の接合には、和風家具などで用いられる「先留め」と呼ばれる接合方法を採用。45度に切り出した同じ厚みの板を接合するこの方法は、見た目も美しく、強度を高める上でも有効です。上部から見れば、筐体の四辺とも同じ厚さの金属板を使っていることも表現でき、素材の素性の確かさも実感できるデザインとなっています。
img/筐体
厚さ4ミリの天板の表面は、無方向に螺旋状研磨目を施すバイブレーション研磨で仕上げました。つや消しで温かみのある、あたかも「和紙」をイメージさせる表情を作り出しています。天板上面のエッジ部分はダイヤモンドカットで面取りが施され、つや消し面と対照的にキラリと光る光沢がアクセントとなっています。
img/本体(天井)
「ノイズ発生源となる液晶パネルやLEDランプは極力排除したい」という企画担当の意向を汲み取り、商品前面にはわずかにプッシュ式のメインスイッチと稼働状況を示すLEDが一つあるだけ。ノイズ排除という徹底した機能志向が、和テイストと融合し、極めて禁欲的なデザインに結実しました。
img/本体(正面)
オーディオ機器の使い勝手にいかに迫るか。
ソフトウェア設計担当
源川 裕二
Yuji Minagawa
HFAS1のターゲットとなるハイエンドオーディオユーザーの多くは、
ネットワークオーディオにもオーディオ機器のような使い勝手を求めておられます。
パソコンを操作してややこしい初期設定をする――その煩わしさからユーザーをいかに解放することができるかが、ソフト開発のテーマでした。
セットアップは、本機とネットワークプレーヤーと、パソコン(タブレットなど)を接続したルーターにLANケーブルで接続するだけ。
しばらくするとパソコンに本機が表示され、使用可能状態に。プラグ&プレイでお使いいただける環境を整えました。
img/本体(背面)
img/源川裕二 |
メディアサーバーには、ネットワークオーディオのデファクト・スタンダードと言われているTwonky Serverを採用しました。いろんなメーカーのプレーヤーとの互換性も高いソフトです。これに手を加え、ユーザーが「自分ルール」で使い勝手の良いライブラリを作れるようカスタマイズ。またこれまで指摘されてきた「アルバムの曲順がトラック順に表示されない」といった問題点も解消するなど、様々な改良を施しました。 |
照明を落としたリスニングルームでは、小さなランプの点滅も気になるもの。本機背面には2つのLANポートが設けられており、それぞれのポートには通信速度や通信状況を表示するLEDランプが装備されていますが、その点滅が「気になる」、「ランプからのノイズが心配」とのユーザーの声に応え、ランプのオン/オフをソフトウェアで制御できる機能を付加しました。他にもノイズ対策として、楽曲データの伝送を毎秒1ギガバイトから毎秒100メガバイトに落とせる機能も装備。これらの設定は、パソコンやタブレットのコントロール画面で簡単に行えるようになっています。
img/ロケーション
通常、ネットワークオーディオサーバーは24時間365日通電し、スマホなどを使って外出先で購入したコンテンツも即座にダウンロードできるように使います。けれども多くのオーディオファンにとって、オーディオ機器は「聞く時にだけ通電する」のが自然なスタイル。そんな使い方もできるよう、本機ではスイッチ・オンと同時に購入済みのコンテンツのダウンロードとバックアップがスタートする機能など、オーディオ機器ライクな使い勝手にこだわりました。デジタルの便利さをアナログ感覚で使えること。そんな機器を目指しました。 |
img/源川裕二 |
企画担当 北村 泰紀 |
ハードウェア設計担当 宮本 明也 |
設計デザイン担当 森田 伸一 |
ソフトウェア設計担当 源川 裕二 |