プロフィール
小嶋先生(てんむすび税理士事務所代表)
総務歴13年、貿易歴16年の経験により、総務改善や貿易に強い税理士の先生です。さらに、ITや経理にも強く、どのような記録がどのようにつながって何を出しているのかをよく分かっています。ソフトやシステムの導入から運用計画・管理まで、幅広く企業の支援を行っています。
本記事は、電子帳簿保存法で起こるリスク、対処法、具体的施策にスポットライトを当てて、みなさんが行動すべきことを分かりやすく提示することを目標にしています。
「メロンって何科?」と言われて、「ウリ科で、実は野菜です。」というのは、植物学の専門家には大切かもしれません。でも、一般にはおいしく食べるレシピのように、具体的な扱いの方が大切です。
電子帳簿保存法(以下「データ保存法」とします。)の改正も、わたしのような税務の専門家には小さなことでも興味大です。でも、現場の方は、最小限大切なこととその対策だけを知りたいはず。
データ保存法の改正での最大のリスクはコレです!
法改正におけるリスクは、データで受け取った請求書・領収書などが、データで保管されていないと、証拠保管がされていないと税務調査で指摘されること!
具体例を挙げてみます。
来期の売上領収書をPDFデータで受領したが、印刷してデータを保管していなかった
税務調査官に「領収書がデータ保管されておらず、来期計上の証拠書類がない」と指摘される
データ保存法は、これまで届出制で任意適用でした。
それが、使いやすくするために届出制が廃止され、かつ、データで受け取った請求書や領収書などをデータで保管する義務が原則的に課されることとなりました。
そうすると、上記のような指摘がされるようになります。
だから、経理担当者、経理を見るマネージャー、経理を管理する役員の方は、最低でも証拠書類の保存義務を満たすよう社内ルールを整え、社内システムの導入をする必要があります。
会計帳簿の保存や、紙で受け取った書類をスキャンして廃棄していいというのは、任意の話です。上記のデータ保存の仕組みが整ってから挑戦する点です。
データ保存の仕組みを整えることで、当面の追徴課税や青色申告の取り消しのリスクを減らせます!
税理士の立場として、早めに導入をして安定運用につなげたいです。
そのための、「コレだけ」を次にご提示します。
(ディスプレイ ・プリンタ備え付けや簿記の原則に従っているかは要件ですが、ほとんどの方が対応できるので、入れていません。)
「コレだけ」と考えて対応する場合、ご用意いただくものは上記の3つです。
今までの業務に3つだけ対策すれば、改正法に対応できると考えると簡単ですよね。
「コレだけ」を導入すると、
という良さがあります。
自分で作った帳簿書類やもらった紙をデータで保存することは任意です。まず義務への対応を進めたい方は紙のデータ化を次のステップに位置づけてしまいましょう。
できる組織はいっぺんに進めることもできます。でも、段階を追った方が、経理業務の変革は安心できます。税理士事務所のように経理の提供を仕事にしていないのであれば、少しずつ進めるのが吉です。
また、連載でお伝えしますが、導入自体が簡単でもその意思決定は進みにくい傾向があります。というのも、現場と決裁権がずれまくるからです。
導入決定のための時間を考えて、早めに進めましょう。
改正法のスケジュールはこのようになっています。
2023年12月31日までは、改正法に従わなくても許してもらえる状態です。
ただ、2024年1月1日からは、データ保管義務が開始します。
「2024年」と聞いてどうですか?
日々の業務に追われると、意外と時間がありません。
また、検討に長時間かけるくらいなら、最低限の対応を最速でしてしまう方がいいです。
検討時間が長くても、生産性が上がらないので。
本記事などを参考に、早めに初期導入をして、運用改善に時間を使いましょう!
データ保存法では、保存したデータを検索できるようにしておく要請は、税務調査時に税務調査官の求めに応じてすぐにデータを提出させる目的から出ています。
検索の用意をしない場合、データを提出することになります。データ提出より、その場で検索してもらう方がいいので、検索の準備をしましょう。
下準備として、「日付、取引先、金額」で検索できるように名前にこれらの情報入れておくのです。
でも、日々の業務で手で入れ込むのはけっこう面倒くさいです。
そして、税務会計の専門家から見ると、この面倒くさいことがしっかりできていると印象がいいです。
できていないということは、「資料整理の仕組みが整っておらず、税務申告上のミスもあるのでは?」という印象を税務調査官に与えます。
だからこそ、「簡単に入力できる」「入力に能力差が出ない」「誤入力が少ない」仕組みを作っておくべきです。
誤入力が起こりやすいのは、取引先の名前ではないでしょうか。
全角半角、漢字変換など、ちょっと違って検索に引っかからないと、きちんと保存していないと税務調査官に見られる可能性があります。
検索の体制を備えない場合には、全データを税務調査官に提出する(ダウンロードさせる)代替方法があります。
検索させない代わりに、全データを税務調査官に持って帰ってもらうのです。
データをすべて精査され、厳しい調査を受ける可能性が出てきます。
正確には、税務調査官は、「法律の根拠に基づくことなしに、租税の減や徴収猶予を行うことが許されない」*のです。
警察官が、目の前で信号無視をしている車を無視して捕まえないことはできませんよね。
同様に、税務調査官も、目の前にデータを持って帰れば精査してチェックする職務上の義務があります。
だから、「厳しい検査を受ける」と表現されるのです。
この点を踏まえて、検索機能を用意しておきましょう。
簡単に、短時間で、システマチックに名前をつけるため、命名くんを使うと便利です。
なお、 本稿では、命名くんを使った上で、もう一歩工夫を加えて、法令が要求する索引簿を簡単に作成する方法をご紹介します。
データ保存法のリスクを考える上で、保存義務7年間の間にデータが消えるリスクがあります。
データ保存の方法について、真剣に向き合うべきです。
「データが消えたらどうなるのですか?」という疑問に対して、一問一答を要約すると「データバックアップを強制はしないが、紛失したら取引先に求めるなどしてできる限り収集してね」と言っています。
7年間もダウンロードの対応をしないプラットフォームがあります。
また、取引先に7年前のデータを依頼できますか?
普段しない余計な仕事をすれば、かなり残業時間が発生しませんか?
これらから、検索性もさることながら、データを確実に保存するデータ保存のアイテムを用意するべきです。
なお、デバイス好き・経理好きの私なら、RAID付きのNAS+時差バックアップくらいまでをオススメします…。
が、「コレだけ」というからには簡単で安価なものを考えたいです。
ということで、ブルーレイドライブでM-DISCに書き込んで消えないようにする方法をオススメします。
BRD-UT16D/Mがその対応機器です。
ここまで読んでいただければ、具体的になにをするべきか、イメージがついたはずです。
まとめると、
法改正でのデータ保存の義務に対応するのは、コツが分かれば簡単です。
さっと理解、さっと承認、さっと必要な規程とアイテムを用意して、対応をすませてしまいましょう!