取材日:2017年12月25日
三重県いなべ市は教育現場における学びの環境の充実、特に授業のICT化をはじめとする様々な施策に注力する自治体です。導入対象校の一つには、「てれたっち」により「わかりやすい授業の実現」と「教員の授業準備の効率化」という二つの面で目覚ましい効果を上げたという「いなべ市立三里小学校」があります。
今回の導入について、三里小学校森田登志子先生、谷崎愛弓生先生、いなべ市教育委員会・学校教育課の水谷妙指導主事にお話を伺いました。
森田先生今回は、複数クラスでのシェアではなく、教室に常時据え置きという形で導入できるということでした。使う度に移動したり設定したりする必要がないので、心理的なハードルはだいぶ下がりました。先行導入のクラスを決める段階で、それならば児童たちのためにも挑戦したいと手を挙げました。
谷崎先生私も森田先生と同じ理由です。最初は苦手意識があったものの、実際に使ってみたら思いのほか簡単で、「あ、できるんだ!」というのが率直な感想でした。毎日使う中で慣れてきて、以前より自信がつきました。「てれたっち」を通じて、ICTは決して難しいものではなく、便利で楽しいものと認識が改まりましたね。
森田先生とにかく低学年の児童の反応はすごいですね。もう目を輝かせて寄ってきます。タッチペンで画面に書き込みしたり、書いたものを隠す機能を使ってパッと消してみせたりするだけで、最初のうちは歓声が沸き起こりました。私は児童にもペンを渡して画面に書き込みさせたりと、参加型の授業を行っていましたが、「書いてみたい人?」と呼びかければ、ほぼ全員が元気よく手を挙げます。あまりに「書きたい!」という児童が多すぎて、盛り上がりすぎてしまうので、最近は書かせるのを少し控えているほどです。
谷崎先生高学年の児童はもう少し落ち着いていますね。皆ご家庭でタブレットなどを使い慣れているので、新しいツールの1つと自然に受け入れ、スッと馴染んだ印象です。授業では、主に画面上に表示された資料などに対して、「ここだよ」と言ってタッチペンでマークするといったシンプルな使い方をしていますが、これだけでポイントが非常によく伝わります。今後は様子を見ながら児童にもタッチペンを使わせていきたいと思っています。
森田先生「てれたっち」とカメラを組み合わせて使えば、教科書、副教材など、なんでもすぐに大きなディスプレイに映せて、それを拡大して細部まで見せたり、大事なところに書き込みしたりと、いろいろなことができます。とにかく、視覚的な授業は児童を惹きつけます。イメージがつきやすいのでしょうね。また、児童のノートを電子黒板に取り込んで拡大して見せたりもしています。ほかの児童のノートを見ることで刺激を受けるようで、子どもの学習意欲は格段にアップしますね。
谷崎先生黒板のみを使ったアナログ授業の場合、言葉による説明、それから教科書と黒板を交互に見るということの繰り返しで子どもの集中力が途切れることもあるように思います。しかし、「てれたっち」があると視覚的にも興味を引くことができ、集中力を維持させることができます。
谷崎先生今回授業した社会科は、とにかく資料が重要な教科です。児童にはなるべくたくさんの資料に触れてもらいたいとの思いから、以前は教科書やその他様々な資料を拡大コピーして準備していました。しかし、職員室にあるコピー機はA3までの対応です。これは、黒板に掲示するにはやや小さいサイズですので、大きなサイズの資料にすることが必要でした。授業は45分間ですが、そのためにたくさんの準備時間が必要となり、また授業以外にも多くの業務をこなしている中で、負担になっていました。その点、「てれたっち」は手軽で、そのままサッと資料を画面上に表示させることができるので準備の時間は大きく削減できました。
森田先生たしかに、教材の準備は非常に楽になりました。算数でも、従来は例えば九九ならば何パターンか問題を作成して拡大コピーし、教室に貼ってということの繰り返しでした。しかし「てれたっち」でしたら、その場で教材を取り込んで画面に表示すればいいだけ。さらに画面上に書きこみすることもできますから重宝しています。
谷崎先生私の場合は、事前に紙のコピーを用意することはほとんどなくなりましたね。コスト削減にも貢献できていると思っています。また、実際に授業をしてみると、その都度、児童の反応は違うものですが、コピーした紙の資料は、あくまで事前に準備してきたものしか使えません。しかし、今は児童の反応を見て、パソコンに取り込んであるすべての資料の中から、臨機応変に「見せる資料」を変えることができます。これは非常に効果的ですね。
水谷指導主事森田先生、谷崎先生ともに「ICTは苦手」と仰いましたが、そういう中でも「子ども達のためにどういう使い方ができるか」と試行錯誤を重ねて取り組んでくださっています。実際に使ってみることで、新しいアイデアがどんどん生まれ、活用の幅も広がります。こうした現場の先生方の姿勢がよい効果につながっていることは間違いありません。「てれたっち」により、子どもたちが自主的に発言したり、発表を積極的に行えるという影響もあるようですので、こうした表現力を高めるための1つのツールとして評価しています。また、先生方の授業をアシストし幅を広げるツールともなります。子どもたちの学びにつながる効果的なICTの活用方法を今後も考えていきたいです。