取材日:2017年1月18日
(株)アロバでは、店舗やイベント会場といった施設への来客の数、性別や年齢(年代)、滞在時間、感情までを、設置したカメラの映像をもとに解析するソフト「アロバビューコーロ」を開発。2016年8月からテーマパークの東京サマーランドに導入されました。そのソフトの稼働に選ばれたのはアイ・オー・データ機器の特定用途向け製品「アプライアンスBOX」。マーケティング手法に新風を吹き込むこのシステムについて、(株)アロバの担当者の方々にお話を伺いました。
田子氏ひとことで商品の特長を説明すると、見える化です。ネットワークカメラで顔を撮れば、その人物が男性か女性か、どのくらいの年齢かを見分け、いま笑っているのか怒っているのかも一瞬で判定できます。しかも、自動的にグラフ化することが可能です。どの時間帯に何歳くらいのお客様が多いか。お店に入る時と比べ、出る時に笑顔が増えているか。これまで人の感覚に頼るしかなかったお客様の属性を、感情までデータ化できるのです。いちいちカウントしなくていいし、モニターを見続ける必要もありません。
根上氏「アロバビューコーロ」は、弊社が培ってきた監視カメラ録画システム「アロバビュー」の画像取得機能と、Microsoft社の「Cognitive Services」で提供される、顔の検出・分析・グループ化・タグ付けする「Face API」と、感情を認識する「Emotion API」を連携させたサービスです。具体的には、専用の端末を使いネットワークカメラで取得した映像から顔の部分を切り出し、クラウド上にある各々のAPIで分析した結果を「Azure Event Hubs」で集計。そのデータを「Power BIツール」でグラフ化しています。
田子氏従来から顔を解析する製品は他にもありました。ただ、システムの構築に数百万円単位の高額な費用が必要でした。「アロバビューコーロ」は、1カメラあたり月々10,000円からと既存の防犯カメラを利用して最小限のコストで導入できるのが大きな強みです。ですから、大規模な施設でたくさんのカメラを使ってご利用いただくことはもちろん、街の小売店でも導入していただけます。敷居の高かった顔の解析を活かしたマーケティングシステムが、気軽にご利用いただけるわけです。
田子氏レジャー施設である東京サマーランド様からご相談を受けたのは、2016年6月に出展した展示会がきっかけでした。その頃、サマーランド様はスタッフの主観に頼っていたお客様属性の取得を客観的なデータにもとづいた評価へ移行すべく、システムの構築を急務とされていました。早速ご利用環境のヒアリングを始めましたが、夏のピーク時の来場者は1日2万人、朝の開門と同時にどっと人波が押し寄せる中、膨大な顔データをどう安定して処理するかが課題となりました。そこで24時間365日稼働を前提に設計され、高解像度の映像処理にも対応できる、アイ・オー・データ機器の特定用途向け製品「アプライアンスBOX」を採用しました。
根上氏映像を処理する端末に重要なのは、なんといっても信頼性です。システム導入後、基本的にはずっと動かし続けることになります。つまり、連続稼働しているとはいえ簡単にフリーズしもらっては困るわけです。この条件を満たす、OSを搭載したハードウェアとなると、組み込み向けWindowsを搭載した「アプライアンスBOX」しかないと思いました。事実、導入した8月から今日まで1度もフリーズしていません。技術者としてはこれが一番嬉しいですね。
田子氏小型というのも魅力です。仮に液晶がついていれば、便利であっても大きくなってしまいます。「アプライアンスBOX」はとにかく置きやすい。突起物もないので、設置場所に困ることがありません。実は「アプライアンスBOX」は出入り口付近や受付カウンターの足元など、あまり良い条件とは言えない環境に置かれることも多いのですが、それでもタフに動いてくれています。
根上氏「アロバビューコーロ」は店舗だけでなく展示会にも採用されています。1月には東京オートサロンで3日間、自動車の部品メーカーさんのブースに設置いただきました。カメラ4台に対して「アプライアンスBOX」2台を使ってデータの処理を行いました。展示会の場合、来場者が限られたスペースの中で動かれるので、同じ人は排除しながらカウントしなければなりません。そのため、会期中に9,200人の方がブースへいらっしゃったのに対し、「アプライアンスBOX」では実に18万回もの演算処理を行っていました。カメラ2台を受け持つのは厳しかったと思いますが、非常に安定しよく働いてくれました。
田子氏その展示会では、グラフ化した来場者データをスマートフォンでリアルタイムに確認できるようにしました。「昨日に比べてお客様が増えている」「笑顔の人が多い」といった感覚を数値で共有できると、接客するスタッフのモチベーションが上がります。また、1日目のデータから来場のピーク時間が分かるので、翌日のスタッフのシフトが組みやすくなります。さらに、人が数多く来る時間帯に景品を出すなど、これまでより一歩踏み込んだ細かいおもてなしができるようになるのです。
根上氏今後はデジタルサイネージに搭載して、近づいてきた方の年齢・性別が分かると、その方に応じたコンテンツに切り替えて表示することも可能になります。自動販売機でその人に合ったおすすめのジュースを紹介することもできるでしょう。そのためには、より小型でハイスペックなスティックPCがあればありがたい。アイ・オー・データ機器にはぜひ期待したいですね。
田子氏「アプライアンスBOX」については、「アロバビュー」を使った録画と、「アロバビューコーロ」を使った解析の2つを同居させたシステムとして提案していきたいです。
根上氏弊社の「アロバビュー」に「アプライアンスBOX」を採用以来、アイ・オー・データ機器には長くお付き合いいただいています。「アロバビュー」の開発当初、これをインストールできる小型 PC を探していた時期に、「Windows Embedded Standard 7 」を搭載する「アプライアンス BOX」 がリリースされ、ネットワークカメラシステム販売の起爆剤となりました。昨年リリースされた「Windows 10 IoT Enterprise」を搭載したモデルでは、設定作業短縮のため、「アロバビュー」をプレインストールし、あらかじめいくつかの設定内容を登録した状態での出荷を検討いただいているところです。これからもパートナーとして、頼りにしています。