取材日:2021年4月7日
石川県七尾市では、コロナ対策として式典の校内配信に注力する学校が増えています。七尾市立天神山小学校もその1つ。令和2年度の「ゆずり葉祭(6年生を送る会)」と卒業式で校内配信に挑戦し、いずれも無事に成功させました。配信の要となった商品は、「スタンドアロン型 ライブストリーミングBOX 「LIVE ARISER」GV-LSBOX(以下GV-LSBOXと表記)」です。
さらに同校では、令和3年度入学式で3度目となる式典配信を行いました。今回、その入学式を訪問見学させていただき、配信実現に向けて尽力された松井敏史校長(現・七尾市立田鶴浜小学校校長)、また教務主任の杉森慎一先生に詳しくお話を伺いました。
松井校長コロナ禍で「集まる」ことが不可能になってしまった中で、なんとか従来の集会に近いことができないかと考えていました。始業式や全校集会は校内放送を聞くという形で行いましたが、やはり話し手の顔、表情を見せられないので物足りず、子どもたちも気の毒でした。
松井校長幸い各教室に大型提示装置が導入されていますので、式典会場でビデオ撮影し、それを画面に表示させられないかと。会場となる体育館には必要最小限の児童を集め、そのほかの児童は出番がある時のみ体育館へ移動、それ以外は教室で式典を視聴する、という形です。ツールは当初、Web会議サービスを検討したのですが、その場合だとインターネット環境が必要になり、実現は難しいとわかりました。回線に負荷をかけられないこと、また配信の安定性を考えると、やはり校内LANを使った形が理想的です。こうした悩みを教育委員会に相談したところ、GV-LSBOXを紹介されました。
松井校長現在、式典の開催に関しては、どの学校でも同様の悩みを抱えていると思います。新しい仕組みを作るにも、旧来の放送室の機材を活用しようとなると、改修に高額な費用がかかり現実的ではありません。しかし、このGV-LSBOXを使えば、校内LANを活用した映像配信の仕組みが安価かつ簡単に作れます。実は七尾市の校長会に参加した際、他校の先生方にお勧めしたんですが、皆さん興味津々でした。その後、多くの学校で導入されています。
松井校長天神山小学校の入学式を現場で見ることはできませんでしたが、トラブルなく終えたと聞いて喜んでいます。また、実は異動先の田鶴浜小学校でも、同様に始業式の配信を行っています。こちらでもGV-LSBOXを導入していますが、無事に配信することができました。
松井校長映像配信のできるこの仕組みは、式典だけに止まらず、分散開催・休止となってしまった様々な行事をサポートしてくれると考えています。例えば天神山小学校では、対面での絵本の読み聞かせ会が行えなくなっていますし、田鶴浜小学校では、給食時ににぎやかに全員で食堂に集まることができていません。このような日常の様々なシーンで子どもたちが感じているはずの、コロナ禍のコミュニケーションの「物足りなさ」を補ってくれるものとして、今後も映像配信に期待しています。
杉森先生当初、ビデオカメラを有線で接続して撮影していたのですが、HDMIのケーブル長には限界があります。会場は広いのに、撮影者はケーブルの範囲でしか動けないですよね。そこで、AirPlayによるミラーリングに思い至りました。本校では以前からApple TVを複数台所有していまして、iPad内の画像やデータの共有は、普段の授業でも行ってきたという経緯があります。
杉森先生皆、食い入るように画面を見ていました。体育館に響く号令に合わせて教室でも背筋を伸ばし、どの子も礼儀正しくしているんですよ。音声だけの放送とは違い、映像があれば、たとえ教室にいても式典の緊張感や喜びをより強く感じられるようですね。体育館と教室の間に距離を感じさせない、まさにシームレスな式典が実現しました。
杉森先生入学式の配信でGV-LSBOXの操作を担当した職員は、実は昨日初めて本機器に触れたという初心者でした。特にICTが得意という先生ではないのですが、問題なく操作してくれました。学校へのICT導入は、一般レベルの知識しか持たない方でも簡単に操作できる「わかりやすさ」が必要だと思っています。「詳しい人間が、難しいシステムを使いこなす」のは当たり前ですが、それでは広がっていきません。本システムはこういった観点でも学校での利用に適していますね。
杉森先生ぜひ児童会の放送委員会で新しいことを行いたいですね、児童が主体的に操作する方向を目指します。先生方からの連絡などを配信することも考えています。校長室からの朝礼配信もいいですね。今回、コロナ禍でピンチとなった学校行事をなんとかしたいという一心で始めましたが、終えてみれば、新しい可能性をいくつも感じられる取り組みとなりました。本校の今年のキーワードは、「天神山でよかった! 七尾でよかった!」というものなのですが、まさにこれを体感する未来的な施策になったと感じています。