(記事公開日:2024年5月9日)
どのような設備やIT機器、クラウドサービスでも、故障やネットワーク障害のリスクは避けられません。社内で使用中のシステムにトラブルが発生すると、業務に支障が出るおそれがあります。
機器の故障やネットワーク障害が発生しても安定的に業務を続けるには、冗長化の考え方が必要です。冗長化とは、IT機器やシステムのトラブルに備えて予備を用意することで、さまざまな運用方法があります。
本記事では、冗長化の基本的な方法や冗長性を持たせたシステム構成の例を紹介します。
IT機器やシステムに冗長化を実施すれば、トラブル対応になるのに加えて、システムの負荷の分散にもつながります。まずは、冗長化の必要性やメリットを押さえておきましょう。
ビジネスシーンはもちろん、プライベートでIT機器やクラウドサービスを利用する際も冗長化の考え方が役立ちます。
冗長化とは、IT機器やシステムの予備を準備する作業を指します。同一データのスペアを所持することで、システムトラブルや障害への対策として有効です。
メインサーバーと同じデータを持つ予備サーバーを社内に用意する企業だけでなく、個人レベルでもHDDの故障に備えて別のHDDやクラウドストレージに同じデータを保存している方もいるでしょう。
冗長化の方法はさまざまですが、同一のデータを予備として使える状態にすることで、セキュリティ対策やBCP対策にも役立ちます。メインのIT機器やシステムが故障してもすぐに予備が利用できれば、業務の継続が可能です。
システムの過剰な負荷を解消できるのも、冗長化のメリットです。予備のサーバーに一部の処理を任せる運用体制にすれば、メインサーバーへのアクセスを分散でき、安定した業務運営が可能になります。
実際、複数のサーバーに負荷を分散することで、業務システムの安定稼働を実現している企業は少なくありません。過剰なアクセスを引き起こすことでシステムをダウンさせるDDoS攻撃のような攻撃に対しても、冗長化は有効な対策です。
ミラーリングとは冗長化の一種で、データの更新時にほぼ同じタイミングで同一のデータを複数の場所に保存することです。一方、データのバックアップは、定期的あるいは任意のタイミングでデータのコピーを保存する作業を指します。
両者はデータをコピーする点は同じですが、ミラーリングは主に事業の安定継続が目的、バックアップはスムーズなデータ復旧が目的です。
また、ミラーリングはデータの作成とほぼ同じタイミングでデータを保存するのに対し、バックアップは基本的に一定期間分のデータをまとめて保存します。両者は目的とデータ保存のタイミングが異なるため、違いを理解しましょう。
今さら聞けないバックアップとは?必要性やタイミング、具体的な方法を解説!
冗長化には、メインで使用するシステムと予備の機器・システムとの運用方法によって、主に以下の4種類の構成があります。
1.アクティブ・スタンバイ
2.アクティブ・アクティブ
3.プライマリ・セカンダリ
4.マルチマスター
それぞれの構成を具体的に見てみましょう。
アクティブ・スタンバイ構成は、メインのサーバーに問題が発生した際、同じデータ構成を持つ予備のサーバーに切り替える方法です。
平常時はメインのサーバーやシステムのみを稼働し、予備は使わずに待機状態にします。メインサーバーにトラブルや障害が発生したら予備サーバーを稼働し、業務に支障が出ないように対応する方法です。
また、待機する予備機器の電源の状態によって、ホットスタンバイとコールドスタンバイに分かれます。ホットスタンバイは予備機器の電源も入れておき、コールドスタンバイは平常時に予備機器の電源をオフにしておきます。
アクティブ・アクティブ構成は、メインと予備の両方のシステムを稼働した状態で運用する方法です。同じ機能を持つ機器を複数用意し、平常時からすべて稼働するのが特徴で、メインシステムの負荷を分散するのに役立ちます。
メインと予備のサーバーを準備して同時に稼働することで、アクセス負荷を分散しつつ、障害の発生に備える構成が一般的です。いずれかのサーバーに異常が起きても、別のサーバーが処理を引き継ぐため、業務システムを停止せずに済みます。
プライマリ・セカンダリ構成は、複数の機器を稼働し、ひとつのシステムを管理・制御用として運用する方法です。
データベースサーバーの運用で一般的に用いる構成で、管理・制御用のプライマリーがデータの書き込み・読み込みを担当します。一方、セカンダリーはプライマリーのバックアップを担当し、データの複製などを実行するのが特徴です。
プライマリーに障害やトラブルが発生した際は、特定のセカンダリーがプライマリーの役割を引き継ぎ、全体の運用に支障が出ないように対応します。
マルチマスターとは、稼働するすべての機器をプライマリーとして扱う方法です。プライマリ・セカンダリー構成で用いるセカンダリーがプライマリーと同様の役割をこなします。
運用する全機器でデータの書き込みが可能になるため、全体の処理がスムーズになり、障害発生時にもシステムの利用を継続できるのが特徴です。
プライマリ・セカンダリー構成は、セカンダリーからプライマリーへの切り替えでタイムラグがありますが、マルチマスターはラグの発生を回避できます。ただし、複数の機器に障害が起こるとデータの整合性の担保が難しくなるため、運用には工夫が必要です。
冗長化は社内システムの基盤となるサーバーに加えて、業務データを保存するストレージやデータをやりとりするネットワークも対象です。障害対策として冗長化を導入したほうがよい代表的なシステムを整理しておきましょう。
サーバーに障害が発生すると、システム全体が影響を受け、日常業務に大きな支障が出るおそれがあります。
そのため、社内システムで最初に冗長化の対象となるのがサーバーです。メインサーバーの他に同一のデータ構成の予備サーバーを用意すれば、機器の故障やサイバー攻撃の有効な対策となります。
冗長化はあくまで被害を軽減するもので、完全に防止できるわけではありません。しかし、きちんと対策することで、システムの深刻なダメージは回避できます。日常業務にも支障を出さず、速やかに状況を改善できるでしょう。
社内で利用するストレージも冗長化したいシステムのひとつです。企業は機密情報を含むさまざまなデータを日常的に取り扱っており、必要に応じて社員がアクセスできるストレージに保管しています。
大切な業務データを保管するストレージが故障やネットワーク障害で使用できなくなれば、一時的な業務の停止や遅延につながるため、予備のストレージに同じデータを保管するといった冗長化が必要です。
定期的なデータのバックアップに加えて、予備のストレージから常に必要なデータを利用できる体制にすることで、データの破損や紛失による被害も減らせます。
ストレージとはどのようなもの?種類と特徴、用途別の選び方を紹介
社内ネットワークも冗長化の対象として、多くの企業が対策を打ち出しています。メインネットワークに対して予備のネットワークを準備し、主に通信障害に備えるのがネットワークの冗長化です。
近年はクラウドサービスが充実し、企業も業務データをクラウド上でやりとりするケースが珍しくありません。クラウドサービスは、オンラインで場所を選ばずシステムにアクセスできますが、通信障害が発生するとデータを利用できなくなります。
社内に予備のネットワークを構築し、障害の発生時にネットワークを切り替えれば、業務への影響を最小限に抑えられるでしょう。
冗長化によってIT機器の故障やネットワーク障害に備えるには、いくつかの点に注意を払う必要があります。より安定したシステムを構築する場合、多くのコストがかかるだけでなく、システムの運用・保守の手間が増える点も理解しましょう。
冗長化のやり方にもよるものの、日常的に利用するシステムとは別に、予備のシステムを準備するには相応のコストがかかります。IT機器の購入費や機器を稼働するランニングコストなど、さまざまな費用を計算に入れなければなりません。
特に、多くの社員が利用するシステムの冗長化を図る場合、複数のサーバーやストレージを用意する必要があります。予算内で有効な対策をするには、何を優先するか慎重に検討することが大事です。
システムの冗長化を図る場合、メインで運用するシステムに加えて、予備のシステムの保守・管理に多くの労力が必要です。システムのアップデートやデータの更新に手間がかかるため、社員の業務負担が増えることが考えられます。
現状、システム管理に多くのリソースを割けない企業は、積極的なIT人材の採用を検討しましょう。外部のリソースもうまく活用し、安全かつ安定的にシステムを利用できる環境の構築が必要です。
システムの冗長化を実施するための具体的な方法や利用できるサービスを紹介します。システムの冗長化を図る代表的な方法は、RAIDの導入が有名です。ただし、DRBDやクラウドサービスとの併用も有効であるため、ここで押さえておきましょう。
RAIDとは、データを複数のHDDに分散して格納し、性能と耐障害性を同時に確保する技術です。複数のHDDにデータを格納するものの、ユーザーからは単一のストレージにデータを保存しているように見えるため、HDDの違いを意識せずに冗長化を図れます。
他のHDDに復元用のデータを格納する構成であれば、障害が発生してもスムーズにデータの復旧が可能です。RAIDを組むHDDが増えるほど導入コストがかかりますが、データの保全性と復旧速度が高まります。
RAIDとは?データ消失のリスクを回避するRAIDと拡張ボリューム
DRBDとは、TCP/IPネットワークを利用して複数のサーバーにデータを複製するソフトウェアです。システムの冗長化を実現する方法のひとつで、複数サーバー間のストレージをリアルタイムで複製できます。
RAIDは基本的に同一のサーバー内で冗長化を図りますが、DRBDは複数のサーバーを活用してデータの保全性を高めるのが特徴です。オープンソースのソフトウェアで、誰でも無料で利用できるため、多くの企業がシステムの冗長化にDRBDを活用しています。
クラウドサービスを利用して、システムの冗長化を図る方法も一般的です。社内サーバーとクラウドでデータを運用すれば、サーバーに障害が発生してもクラウドで作業を引き継げます。
平常時はクラウドで業務データを運用し、ネットワーク障害が発生したら社内サーバーに切り替えてもよいでしょう。近年はGoogle Cloudをはじめとした多くのクラウドサービスが利用できるため、手軽にシステムの冗長化が可能です。
冗長化を図る際は、RAIDやDRBDといった代表的な方法だけでなく、アイ・オー・データによる「拡張ボリューム」の利用もおすすめです。法人向けストレージのデータ消失リスクを低減できる技術で、メンテナンス性やカスタマイズ性にも優れています。
ここでは、拡張ボリュームの特徴や魅力を紹介します。
拡張ボリュームは、RAID崩壊によるデータ消失のリスクを低減し、安全なデータ運用を可能にするアイ・オー・データ独自の技術です。
HDD2台を1組のペアとして扱い、ファイル単位で複製します。ペア内で稼働時間に差を付けてデータを読み書きすることで、ペアが同時に故障するリスクを低減し、安全にデータを活用できる仕組みです。
一般的なRAIDの場合、RAIDを構成するストレージが同時に故障し、データにアクセスできなくなるリスクがあります。拡張ボリュームは、ペアとなるHDDの劣化に差を付けられるため、ストレージの同時故障によるデータの消失を避けられるでしょう。
拡張ボリュームは一般的なRAIDに比べて、メンテナンスやカスタマイズがしやすいのも特徴です。HDDの交換やメンテナンスのとき、基本的に全領域をリビルドするRAIDに対して、拡張ボリュームは使用領域のみをリビルドします。
作業時間の大幅な短縮とともに、故障からの素早い復旧が可能で、データを維持したまま実効領域の拡大も可能です。システムを停止せずに領域を拡張できるため、業務にも支障が出ません。
拡張ボリュームの特徴やメリットは、以下のページをご確認ください。
RAIDにかわる冗長化技術「拡張ボリューム」で法人向けストレージのデータ消失リスクを低減
社内でIT機器やシステムを安全に運用し、故障や障害に備えるには冗長化が必要です。予備のストレージやネットワークを準備し、メインシステムに問題が起きたらスムーズに切り替えられるように対策しましょう。
データのやりとりの基盤となるサーバーはもちろん、ストレージやネットワークも冗長化すれば、いざというときに業務を停止せずに済みます。
システムの冗長化を図るには、RAIDやクラウドサービスに加えて、アイ・オー・データの拡張ボリュームを利用する方法がおすすめです。一般的なRAIDに比べてメンテナンス性や拡張性に優れているため、この機会にぜひ導入をご検討ください。
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