ビジネスNAS入門|RAID

RAIDとは

障害に備えて機材や回線などを複数用意し、並列に使用したり一部をすぐ使える状態に待機させたりすることを冗長性と呼び、システムをそのように設計・配置することを冗長化といいます。

RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks、レイド)とは、複数台のHDDを組み合わせることで、1台のHDDとして運用し、冗長性の向上や大容量化を実現させる技術です。これにより比較的安価に、大容量で信頼性の高いストレージを構築することができます。

RAIDコントローラにはソフトウェアタイプとハードウェアタイプがあり、CPU高速化の背景やコスト面から、ソフトウェアタイプの利用が増加しています。


ソフトウェアRAID ハードウェアRAID
実現方法 CPUが、OS上の機能として処理します。 専用のコントローラが処理します。
メリット 別途で専用コントローラが不要なため、安価に実現が可能です。 CPUがRAID管理を行わないため、CPUに負荷がかかりません。OSからは単体のHDDに見えます。OSが不安定になっても、RAIDに影響を及ぼしません。
デメリット CPUへ負荷が高まり、同時アクセスによっては、装置全体の処理が遅くなることがあります。
また、OS上の機能として処理を行うため、OSが不安定になると、RAID管理に影響を及ぼす可能性があります。
専用コントローラが必要なため、装置全体の値段が高くなります。
商品シリーズ HDL6-Hシリーズ
HDL-XRWシリーズなど多数
現行商品の該当なし(販売終了品:HDLM3-GWIN, HDLM2-GWIN)

RAIDの種類と概念

複数のRAID方式があり、選ぶRAID方式によっては万が一のHDD故障時でもデータの復旧が可能になります。RAID方式ごとに特長があるので、用途に合わせて様々なストレージ構築方法を選べます。
※商品によって、搭載するRAIDモードは異なります。詳細は各商品ページをご確認ください。

RAID0(ストライピング)

n:HDD数

冗長性 書込速度 読込速度 実効容量
なし n x HDD容量

各HDDに対して、ファイルをブロック単位で分散して書き込み・読み込みを行うため、高速アクセスができることが特長です。また、HDD容量の合計を最大限に利用できます。
反面、1台でもHDDが故障した場合、ファイルの復旧ができません。

RAID1(ミラーリング)

n:HDD数

冗長性 書込速度 読込速度 実効容量
任意の1台 (n/2) x HDD容量

同時に2台のHDDに対して、ファイルをブロック単位で書き込み・読み込みを行います。
どちらかのHDDが故障しても、全てのファイルが残ります。

RAID5

n:HDD数

冗長性 書込速度 読込速度 実効容量
任意の1台 (n-1) x HDD容量

HDD1台分の容量のパリティ(誤り訂正)データを付加して保存し、任意のHDD1台が故障した場合も、故障によって失われた分のデータを、パリティから生成する仕組みです。
パリティ演算が必要なため、CPUに負荷が掛かります。

RAID6

n:HDD数

冗長性 書込速度 読込速度 実効容量
任意の2台 (n-2) x HDD容量

HDD2台分の容量のパリティ(誤り訂正)データを付加して保存し、任意のHDD2台が故障した場合も、同じくパリティから生成する仕組みです。
二重のパリティ演算が必要なため、特に書込速度が遅くなります。

RAID再構築とRAID崩壊

HDD故障が発生しても、前述の各RAIDモードにより実現している冗長性の範囲内であれば、データを保持したまま運用は可能です(デグレード状態)。しかし、故障したHDDを新しいHDDと交換し、できる限り早くRAIDを再構築(リビルド)し、正常稼働に戻さなければなりません。RAIDのリビルドには非常に時間がかかります。その時間は、実際の使用容量には関係なく、RAIDモードとHDDの容量によって決まります。

各RAIDモードにより実現している冗長性の範囲を越えてHDDが壊れた場合は、データを保持できずに消失します。これをRAID崩壊といいます。

HDDの故障に備え、できるだけ冗長性の高いRAIDモードを選択すると共に、万が一、HDDが故障した場合は、素早くHDDを交換し、RAIDのリビルドを行い、冗長性のある状態に戻すことが大切です。そのためにも保守への加入や、事前の予備用交換HDDの準備をオススメします。

拡張ボリュームとは

拡張ボリュームは、LAN DISK Hシリーズより採用されたアイ・オーが提案するRAIDに代わる新しい仮想ファイルシステムです。

RAIDの弱点ともいえるRAID崩壊によるデータ安全性のリスクを軽減するために、アイ・オーが独自に開発した冗長性の仕組みになります。
ファイル単位のミラーリングを行うことで、従来のRAIDの特長である冗長性を持ちつつ、ハードディスクの同時故障によるデータ損失を避ける運用が可能です。

簡単な動作の仕組みとしては、内蔵のHDD2台ごとにペアを組み、仮想システムにより統合させ、ペアの2台のHDDには、ファイル単位で常に同時書き込みを行います。読み出しの際は、片方のHDDから読み出しを行います。

拡張ボリュームとRAIDの違い


拡張ボリューム RAID
冗長性の操作単位 ファイル単位 ブロック単位
速度 △(RAIDモードにより速度は大幅に低下)
拡張性 ◯(運用中に容量の増設可) ×

拡張ボリュームの読み書きの仕組み

一般的にNASの生産時には、同ロットのHDDが搭載されるため、HDDは似通った寿命の実力値になります。
拡張ボリュームは書き込み時のペアに対する稼働時間の分散化と、読み出し時のペア2台のHDDの稼働時間の差により、全てのHDDの寿命を分散させ、同時期に故障するのを防ぐ効果があります。


  • ※1ファイルが最大の残容量を超える容量の場合は保存できない場合があります。また、どのペアに、どのファイルが保存されているか確認する事はできません。

拡張ボリュームの特長

ダイナミックな容量増設

通常RAIDは、RAID構成を保ったままの容量変更はできません。拡張ボリュームは、再構築ペアを順次差し替えることで、データを維持したまま容量増設が可能です。

外付HDDも同一のドライブとして追加可能

USB 3.0対応HDDを増設することで、データを維持しながら、更に容量増設が可能です。2台増設すれば、冗長性を保つことも可能です。

HDD破損時も影響は最小限

万が一、ペアを組む2台のHDDが同時故障した場合、残念ながら当該ペアに保存されているファイルは消失してしまいますが、その他のペアに影響を及ぼすことがないため、NAS全体のリスクを最低限に抑えることができます。
拡張ボリュームは、ペアの2台のHDDの稼働時間に差が出る仕組みをとっているため、同時故障の可能性を低減させています。

HDDの交換時の復旧が速い

故障したHDDを新しいHDDに交換した際、ペア間でリビルドが 行われます。
その際、ブロック単位でHDD全体容量をリビルドを行うRAIDとは異なり、保存されているファイルだけをコピーするため、短時間でリビルドを完了します。

RAIDモードの比較

機能 RAID 0 RAID 1 RAID 5 RAID 6 拡張ボリューム
HDD故障の冗長性 なし 任意の1台 任意の1台 任意の2台 ペアの任意の1台
パリティ演算 なし なし XOR XOR・ガロア演算 なし
書き込み速度
読み込み速度
アクセス分散 × × × ×
動的サイズ変更 × × × ×
リビルド時間
操作単位 ブロック単位 ブロック単位 ブロック単位 ブロック単位 ファイル単位
アクティブリペア × なし
実効容量
(n:HDD数)
n x HDD容量 (n/2)
x
HDD容量
(n-1)
x
HDD容量
(n-2)
x
HDD容量
(n/2)
x
HDD容量

実効容量の算出方法

【例1】「HDL-Z4WM8C2」の場合

HDD数:4台/HDD容量:2TB/出荷時モード:RAID5
実効容量:(4台-1) x 2TB = 6TB

【例2】「HDL6-H18」の場合

HDD数:6台/HDD容量:3TB/出荷時モード:拡張ボリューム

実効容量:(6台/2) x 3TB = 9TB

RAIDとバックアップの違い

RAID(拡張ボリューム含む)とバックアップは、目的も保護対象も異なります。
RAIDは、NASの装置内のデータ冗長性を実現する仕組みです。そのため選択されているRAIDモードによって担保されている冗長性を越えたHDDの故障時には、データが消失してしまいます。

電源故障、システム不安定など、NAS装置内のHDD以外のトラブルに対して、RAIDだけでは対策することができません。
そのためRAIDの冗長性だけに過信することなく、バックアップをセットで利用することをオススメします。


RAID バックアップ
冗長性の目的 複数のHDDを1台のHDDとして運用し、HDDの故障に対する冗長性を向上させる 別の記憶媒体にデータの複製を作成し、万が一、NASに問題が起きても、データを復旧できるように備える
保護対象 データ データ
NAS装置の故障
RAIDを組んでいるので、バックアップ装置を購入する必要はない
大事なデータを守るためには、バックアップは必要です!!

ホットスワップ

複数台のHDDで冗長性を持ったNASにおいて、HDD故障が発生した場合、NASの電源を落とさずに、故障したHDDを交換することをホットスワップといいます。
ホットスワップに対応したNASであれば、交換作業中も通常通りNASを使用でき、業務への影響を最小限に抑えることができます。

アイ・オーの法人向けNAS(「LAN DISK A」以外)商品は、全機種、ホットスワップに対応しています

  • ※実際の交換手順は、商品ごとで異なりますので、マニュアルを確認してください。

HDL2-AH、HDL2-AHWシリーズは、コールドスワップ(電源を落としてから故障HDDを交換)に対応しています。

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