モバイル通信共有 - WN-G54/DCR 【品川区立浜川小学校 様】
「PTA活動はボランティアです。となると作業効率を上げないとうまくいきません。そういう面でITをうまく利用するべきだと考えています」
取材日:2009年7月16日
ボランティア形態で活動を行う団体では、入居している施設の所有権の問題もあって、インターネット回線の敷設工事が行えないことがある。そんな中、品川区浜川小学校PTAは、アイ・オーの無線ルーター 「WN-G54/DCR」を用い、回線工事を行うことなくローコストでインターネット回線の導入に成功した。同製品の導入に至ったいきさつと決め手になったポイントについて、同PTA会長の林俊成氏に話を聞いた。
ITを活用してPTA活動の効率化を図る浜川小PTA
国から小中一貫教育特区として認定されていた品川区では、小学校と中学校の垣根を取り払った柔軟なカリキュラムの導入を数年前からすすめる一方、小中一貫校の開設を順次進めていることで知られる。また同区はITの活用にも熱心であり、全児童に支給されるGPS内蔵のセキュリティ装置「まもるっち」など、全国区のニュースの中で取り上げられた先進的な取り組みも少なくない。
こうしたなか、区の南部に位置する浜川小学校では、およそ300人の会員を持つPTAが日々活動を行っている。同PTAの積極的な活動は他校の先駆けとなるケースも多く、例えば過去に同校が考案したメール一斉配信システムは、いまでは品川区内の38小学校すべてに導入され、緊急時の連絡はもちろん、日頃からの保護者への効率的な情報提供に一役買っているほどだ。
PTA活動の拠点となる本部ルームは浜川小の校舎内の一室に設けられ、3台のPCとプリンタ(複合機)、さらに「NAS(LAN接続ハードディスク)」から成るLANが導入されている。多岐に渡るPTA活動の中でも、学校行事を紹介する会報の作成は大きなウェイトを占めており、PCとプリンタはPTA活動に欠かせない存在である。
これらの機器の多くは、PTA現会長の林俊成氏が主導することにより、この2年ほどの間に導入されたものだ。「PTA活動はどなたもボランティアでやっていて、共働きの方もたくさんいらっしゃるので、例えば少ない時間の中で今日2時間だけ作業するといったケースも出てきます。となると作業効率を上げないとうまくいきません。そういう面でITをうまく利用するべきだと考えています」と林氏は語る。
固定回線の敷設は不可能。コストも抑えたい。さてどうする?
PCや複合機の導入など、これまで順調にIT化をすすめてきた浜川小PTAだが、行政主導によるIT化の進展もあり、本部ルームに早期にインターネットアクセス環境を整える必要に迫られていた。というのも、これまで書面で配布されていた行政や学校からの通知や案内が、09年春からは大幅に電子メール添付による送信に移行が進み、インターネットに接続できなければこれらの案内が見られないという状況に陥ったからだ。
また、教育委員会によってセキュリティのガイドラインが策定されたことにより、同じ学校内にありながら、PTAが学校側のLANに接続することはますます困難になった。USBメモリやフロッピーなど外部記憶媒体によるデータの持ち込みも禁じられ、学校とPTA間のデータのやり取りにはネット経由のウィルス・チェックが必要となった。近くに職員室があるからといって気軽にデータを持っていくことができなくなったのだ。
「学校側とのデータのやりとりに、直接的な媒体(USBメモリーやフロッピー)を持っていけない、という状況になってしまった」(林氏)
PTA本部ルームが独自で光あるいはADSLなどの固定回線を敷設すれば、これらの問題は解消される。しかし、ここにも障害が待ち構えていた。というのも、PTA本部ルームとなっている教室自体、PTAが所有しているわけではないため、許可なく造作を加えるわけにはいかないのだ。
「建物自体は自分達のものでなく区の行政の持ち物ですので、設備を追加するには学校にではなく区に申し立てをする必要があるのです」(林氏)
この本部ルームにはもともと電話回線すら引かれておらず、何かあれば個人の携帯を使うか職員室で電話を借りる状況にある。そのような状況下で新たに光やADSL回線を引くには、非常にハードルが高いというわけだ。
さらに予算の問題もあった。ボランティアとして運営されるPTAでは、PCや周辺機器といったハードウェアは各家庭からの供出に頼らざるを得ないなど、コストを絞った運営を強いられている。このような現状では、ランニングコスト、イニシャルコストともに最小限に抑える必要がある。
これら複合的な事情により、施設に手を加えることなく、複数台のPCがローコストでインターネットに接続できるソリューションが求められていた。
有線ポートの利用により、プリンタやNASヘのアクセスも実現
そんな時に林氏の目に留まったのが、アイ・オーの無線ルータ 「WN-G54/DCR」だった。1枚のデータ通信カードをシェアできるこの製品を利用すれば、回線工事を行うことなく複数台のPCがインターネットに接続できる。導入にあたってネットワーク構成を変更する必要もないので、LAN内の「NAS(LAN接続ハードディスク)」やプリンタもいままで通り利用できる。
Wi-Fiに対応し無線LAN PCの追加も容易な本製品だが、林氏が今回注目したのは、本製品の背面に装備されている有線LANポートだった。
「有線LANポートがあることは非常に魅力的でした。もちろんプリンタを無線でつなぐことも不可能ではありませんが、有線のHUBでやったほうがはるかに安価で、「NAS(LAN接続ハードディスク)」もつなげる。有線LANポートの存在が、製品を選んだ際のキーポイントでしたね」
もともとプリンタが業務の中心であり、さらに「NAS(LAN接続ハードディスク)」にバックアップデータを格納していることもあり、有線LANポートは必須だったというわけだ。
ちなみに、浜川小PTAが扱うファイルの中でもっともデータ容量が大きいのは、学校行事の様子を撮影した写真データ、およびそれらを貼り付けたWordファイルだ。現在のネットワーク環境では、これらのデータのやりとりも問題なく行えているという。
「さすがに動画までというわけにはいきませんが、じゅうぶんに実用的です。費用の負担もほとんどなく導入できるのもいいですね」と林氏は語る。当初はウィルコムのW-SIMからスタートしたこのネットワーク構成だが、効果が確認できた現在ではイーモバイルのデータカードも加わり、インターネットへの接続を行っている。さらに将来的にはWiMAXのカードの導入も検討しているとのことだ。
データ通信カード1枚分のコストで、工事いらずでネット接続が可能に
林氏は、今回の無線ルータ 「WN-G54/DCR」は、仮設事務所などでのネットワーク構築に威力を発揮するに違いないと語る。
「我々PTAと同様に、ボランティアという形態で活動をしていらっしゃる方々、それも仮設の事務所を使っていて、終わったら片付けるという方には非常に便利かもしれないですね。1週間しか使わないのに固定回線を引くのは非効率だからです」
固定回線を必要とせず、1枚のデータカードをシェアすることでLAN内のすべてのPCからのインターネットアクセスを可能にする 「WN-G54/DCR」。敷設の容易さはもちろんのこと、データ通信カード1枚分の契約で済むことから、コスト面のメリットも大きい。
「やはり重要なのは運用コストですよ。営利団体でないところはつねにコスト意識を持っていないと。会社だったら1台あたり月々1万円かけても構わないという話になるでしょうけど、我々はそうはいきませんので」
ボランティア的な運営形態をもつ組織では、予算面での制約から、ITのインフラやハードウェアの追加が個人の持ち出しとなっている例も少なくない。最低限の機器の追加で行政が求めるインフラの構築に成功した浜川小PTAの事例は、同様の悩みを持つ組織や団体にとって興味深い事例と言えるだろう。
導入企業概要
旧東海道の上に位置する品川区立浜川小学校は、開校から約70年の歴史を誇る由緒ある小学校である。ITへの取り組みに熱心な品川区の中にあって、同校では緊急連絡用のメール一斉配信システムをいち早く導入するなど、先を見据えた取り組みには定評がある。またPTA活動においては、これらのシステムを活用した校内外パトロールの定期実施など、児童の安全を守る活動に精力的に取り組んでいる。 | |
[校名] | 品川区立浜川小学校 |
[設立] | 1934年9月 |
[校長] | 並木 玲子 |
[生徒数] | 382名 |
http://www1.cts.ne.jp/~hama-e/ |
品川区立浜川小学校PTA 会長
林俊成 様
「複数台のPCを用いてネットワーク化するところまでは来ましたが、インターネットアクセスがネックになっていました。現在は学校側とのデータのやりとりと、アップデート関係を中心に活用しています」