LAN接続ハードディスク「HDL-XR」導入事例【トヨハシ種苗株式会社様】

会社にとって資産である共有フォルダ内のデータをどうやって保管すべきなのかを検討し、このやり方に落ち着きました。
取材日:2010年12月6日
たとえ1枚の見積書であれ、業務で作成されるファイルは会社にとっては資産そのもの。愛知県豊橋市に本社を持つトヨハシ種苗(株)ではこの考え方に立脚し、RAID6対応のLAN接続ハードディスク「HDL-XR」と外付ハードディスクの組み合わせにより、各社員の業務データに障害が発生してもすぐさま復元できる仕組みを導入している。昨今みられる仮想化とはまた違った形でデータの冗長性を確保する同社の取り組みについて、同社総務部情報システム課の筒井喜昭氏、そして導入の提案にあたった(株)トヨハシ事務器営業部営業1課の武藤崇氏に話を聞いた。
導入製品
各部署および営業所に合計15台のHDL-XRを導入

トヨハシ種苗株式会社は、たね・苗のほか、農薬や培土、農業用フィルムといった一般農業資材を農家に対して販売している企業である。地元では「トヨタネ」のニックネームで親しまれる同社は、最近では省力化に的を絞った新しい農業スタイルの開発・提案を行うほか、太陽光発電やヒートポンプといった環境配慮型のシステムも取り扱うなど、農業を通じての"地域振興"や、"食の安全性"への貢献をテーマに、農家のサポートに多方面から力を注いでいる。
愛知県豊橋市の本社のほか、愛知・静岡エリアを中心に9つの営業所を持つ同社では、各部署ならびに各営業所ごとにアイ・オーの「HDL-XR」シリーズをファイルサーバとして導入している。HDL-XRは、RAID6に対応し、カートリッジ式で障害時のホットスワップにも対応したLAN接続ハードディスクである。容量4TBのモデルをRAID 6で運用していることから、実質2TBのディスク領域を使用している形になる。
同社では計15台のHDL-XRが導入されているが、主な用途は「マイドキュメントフォルダとしての利用」だ。HDL-XRのディスク容量を各社員に割り当て、顧客に提出した見積データなど日々の業務データをそこに保存するというものである。1台のHDL-XRにつき平均10人ほどの社員がシェアしており、クォータ機能によって1人あたりが使える容量も定められている。
もっとも、業務データを保存すると言っても、単にネットワークドライブを作って第二の置き場所として利用しているのではない。Active Directoryを導入している同社では、グループポリシーからフォルダリダイレクトの設定を行うことにより、ローカルPCの中にマイドキュメントフォルダを置かず、HDL-XR上の領域を文字通りマイドキュメントとして使用しているのが大きな特徴だ。
フォルダリダイレクト機能を用いてHDL-XRを「マイドキュメント」に
フォルダリダイレクト機能を使ってマイドキュメントそのものをネットワークドライブ上、今回の例で言うとHDL-XR上に置いてしまえば、業務データがローカル上とネットワークドライブ上に分散せず、一箇所に集約することができる。ネットワークドライブの冗長性の高さをどれだけ説いたところで、うっかりローカルPCに業務データを保存してしまう例は少なくないが、この方法であればそうした事態は起こり得ず、すべての業務データはHDL-XR上に置かれるというわけだ。ローカルPCのドライブがクラッシュしても業務データは守られるほか、他のPCからログインした場合でもActive Directoryにひもづけられた自分のマイドキュメントフォルダを参照できるので、スムーズに業務が継続できるというメリットもある。
またRAID6で運用されるHDL-XRは冗長性も高く、万一ドライブのうち1台がクラッシュした場合でも、ホットスワップによりカートリッジを交換するだけで業務を止めずにデータを復旧することができる。仮想化を導入するにはまだすこしハードルが高すぎる、しかし冗長性は確保したいという場合の選択肢として、きわめて現実的な、バランスのとれた解だと言える。
「数年前にActive Directoryに移行したのですが、それまではバックアップを一切取っておらず、実際に業務データが消失してしまったこともありました。年数の経過に伴ってPCが壊れる頻度が上がってくることが予想されるため、会社にとって資産である共有フォルダ内のデータをどうやって保管すべきなのかを検討し、このやり方に落ち着きました。ユーザ任せにするとローカルドライブに保存してしまうケースもあるので、この方法がベストだと思っています」と、同社総務部情報システム課の筒井喜昭氏は、導入に至った経緯を語る。
eSATAハードディスクに定期バックアップ、カートリッジで交換運用


また同社では、これらHDL-XR1台につき1台のeSATA外付ハードディスクを用意し、毎日データのバックアップを実施している。バックアップ先となる外付ハードディスク「RHD-UXシリーズ」はカートリッジ式であるため、週に2回カートリッジを抜いて別のカートリッジに取り替え、完了したバックアップカートリッジは各営業所の金庫に保管し、順番にローテーションさせている。つまり従来のテープメディアの代替としての利用だ。
これにより、カートリッジに障害が発生しない限り前日までは戻ることができ、もしカートリッジ1台に何らかの障害が発生した場合でも、最低でも3日前の状態には戻れるようになっている。フォルダリダイレクトによってマイドキュメントのデータを1台のサーバ上に集約しているからこそ、このように一括でのバックアップが可能になっているわけだ。またカートリッジ式であるため、ハードディスクを本体ごと取り替えるといった手間もかからず、本体を設置したまま簡単に抜き差しができるというのも利点である。
将来はHDL-XRの専用ポートを用いた遠隔地レプリケーションも視野に
筒井氏がHDL-XRの機能の中で興味を示すのが、専用LANポートを用いたレプリケーション機能だ。これはHDL-XRの背面に搭載されているもうひとつのLANポート、通称「EXTポート」を用いてネットワークに接続することで、既存のセグメントのトラフィックに影響を与えることなく、バックアップデータのやりとりを可能にするという機能である。
これを用いれば、社内LANに接続しつつも、レプリケーションだけは別のネットワークを用いて行うことが可能になるので、帯域を圧迫しなくても済むというわけだ。またVPNや専用線を介して別の営業所に置かれたHDL-XRのレプリケーションを本社で行うことも可能になる。
現状はインフラの問題もあって実現に至っていないとのことだが、同社で利用中の専用線を経由して支店と本社間でのレプリケーションが行えるようになれば、災害復旧(DR)対策としても効果を発揮することは間違いない。「いまはギガビットの製品も増えてきているので、将来的にはやりようもありますし、検討しているところです」と、筒井氏は意欲を燃やす。トヨハシ種苗社内の業務データのバックアップ環境の充実に、今後もアイ・オーのHDL-XRは活躍し続けることだろう。

導入企業概要
愛知・静岡エリアを中心に9つの営業所を持つトヨハシ種苗株式会社は、たね・苗のほか、農薬や培土、農業用フィルムといった一般農業資材を農家に対して販売している。種苗の取り扱いだけではなく、土地の気候・風土にあった品種の栽培比較などを通じ、農家への情報提供にも力を注ぐなど、農家のサポートに力を注いでいる。 | |
[企業名] | トヨハシ種苗株式会社 |
[設立] | 昭和43年10月31日 |
[代表取締役社長] | 川西裕康 |
[従業員数] | 173名(平成22年7月現在) |
http://www.toyotane.co.jp/ |
総務部 情報システム課 筒井 喜昭 様
株式会社トヨハシ事務器
営業部 営業1課 武藤 崇 様