取材日:2017年8月29日
塩田中学校は計21学級で、全校生徒600人を超える市内で最大規模の中学校です。32インチ程度の中型テレビが各学級に1台天井から吊り下げて設置されています。また、移動できる大型テレビも4台あります。これらの機器は特定の教科のみで使われていましたが、「てれたっち」の導入後、活用される機会が増えたようです。「てれたっち」の2台使いなど、生徒の心を掴んだ授業をご紹介します。
「てれたっち」をどのように使われているか教えてください。
中井先生私は、その日の授業を最後に振り返ることを大切にしています。しかし、限られた授業時間内ではそれがなかなか難しく、生徒の集中力も持続しません。「てれたっち」が導入されてからは、授業時間内の板書のポイントをカメラで撮ってパソコンに取り込み、モニターに映し出します。授業の熱が冷めないうちに、臨場感を持って「振り返り」ができるのはとても便利になりました。
中井先生「振り返り」は、以前は天井吊りのテレビに映し出していましたが、視認性も悪く「てれたっち」のように画面上に書き込むこともできませんでした。「振り返り」で重要なのは、授業のポイントを生徒に印象付けることなので、「てれたっち」では表示画面に書けるということが利点です。また、その授業の「振り返り」は画像として保存しておくこともできます。撮影して表示するだけなので、振り返り時間の短縮になるのは当然ですが、それを次の時間に活かすことも簡単にできるようになりました。
数学の授業で取り入れた反応はいかがですか?
中井先生私が数学の授業で「てれたっち」に期待していることの一つに図形領域の活用があります。例えば対頂角の問題では、教師がテレビに映した図形を動かして変わらないことを示しますが、「てれたっち」があれば、生徒自身が操作して確認することができます。まず黒板に対頂角を描いて性質を理解し、「なんとなく、それっぽい」と感じたものを、今度は数学ソフトのGeoGebraを使ってパソコン上で動かし、テレビに映し出します。この時点で大半の生徒は納得しますが、「てれたっち」があると自分たちでもやってみたいとなるのです。
2台使いの効果について教えてください
中井先生それは連立方程式の解き方です。連立方程式には、加減法と代入法がありますが、中学では加減法をやった後、初めて代入法の授業に入ります。例えば「Y」を消去したい場合に、その解き方を生徒たち自身に考えさせるシチュエーションをつくります。「てれたっち」を2台使い、解答を「パッと表示する」演出を行いました。生徒自身が「てれたっち」に慣れてくると、それぞれのモニターを前に、「考えを述べ合う」「教え合う」という状態にまで発展しました。答えをパッと出した瞬間に、生徒たちは画面に食い入ります。ざわついていた教室が、その瞬間にシーンとなり、生徒の集中力が再びピークになります。わずかこれだけの仕掛けなのに、理解を促す不思議な力を持っているのが「てれたっち」だと思いました。
他の先生の使い方にはどんな方法がありますか
中井先生私以外でも「てれたっち」を使った授業をしている先生がいます。理科の先生は、実験の授業の際に使用するほか、教養番組の録画を映し出し、ポイントとなる部分を静止させて使用しています。また、体育の授業や部活動では、フォーム修正に使えるという意見が多く、実際に私が顧問をしている女子テニス部で試してみました。いくら口頭で説明を受けてもよくわからないことが、実際に映像で見ることで、生徒自身が発見できたということがありました。また、映像で見せるだけでなく、動画を止めて改善点を「てれたっち」を使ってマーキングする生徒もいました。
「てれたっち」を使ってからの、先生ご自身の変化について
中井先生まず、私たち教師の目線では、授業のコアな部分やそれを助けるためのICT活用として「てれたっち」を使っているので、狙いがはっきりしてきました。少なくとも私は、この授業で何をやりたいか、明確な目的を持って「てれたっち」を使っていて、授業全体の改善になっています。授業では「ここが勝負!」というポイントがあります。そのための教材準備に時間を使うと生徒も意気込みを感じてくれるので、「真っ向勝負の一体感」が生まれます。食い入った先には、積極的な発言があり、振り返りでさらに理解が深まる、これら一連の変化に、私はとても満足しています。
生徒にはどのような変化が現れましたか
中井先生授業に対して、積極的な姿勢がより生まれた感じがします。前に出て、自分でやってみよう!と挙手する生徒も増えました。以前は、数学に苦手意識があった生徒も積極的に友達と関わりながら、次第に理解できるようになってきたようです。
「てれたっち」を使った今後の抱負について
中井先生技術の授業では、これからプログラミング教育が入ってきます。ここで、数学とコラボレーションさせることが私のテーマです。関数領域とプログラミング領域をコラボさせることを試してみたいです。ここでもICT活用は欠かせないですし、「てれたっち」は強力なツールになるはずです。私は、ICTは支援のためのツールであると考えています。授業のポイントを少しだけ示せば、生徒はその先自分で応用力を働かせます。生徒たちの主体性を高める場面で使えることが重要です。その観点で教師の感覚も変えてなければならないし、適応するICT教材を考えて、組み合わせる必要も出てきます。
小池指導主事「ICT」という言葉の響きから、教師にとってハードルが高い印象を持ってしまう方もいると思います。それを払拭し、身近で簡単に使えるものという意識改革をしてもらいたいです。上田市のICT機器活用はまだ高い方だと言えませんので、今後の向上が私たち教育委員会のテーマでもあります。ICT活用に関する教師たちの温度差を埋めるべく、協力を惜しまない所存です。