取材日:2017年11月1日
石川県で遺跡の発掘、保存、展示に尽力する(公財)石川県埋蔵文化財センター様。このたび、発掘資料の長期保存を実践するため、アイ・オー・データ機器が取り扱うJIS Z 6017規格(電子化文書の長期保存方法)完全準拠アーカイブパッケージ「BDR-PR1MC-U100-AL」を導入されました。これは、パイオニア製の長期保存用検査機能付きBDドライブと三菱ケミカルメディア製の業務用アーカイブディスクからなるもので、200年以上※のデータ保存を実現するもの。その導入の経緯と使用について、(公財)石川県埋蔵文化財センターの和田龍介様にお話を伺いました。
和田龍介氏石川県内には、知られているだけでも7,300箇所ほど遺跡があります。遺跡は地下に眠っているので、建物や道路の建設工事で地面が掘り返される際に壊れてしまうのです。そこで、壊される前に遺跡の記録をきちんと残しておこう、というのが発掘調査の第一の目的です。
和田龍介氏まず、発掘された出土品と遺跡の発掘調査でなされた記録を持ち帰り、それらを合わせて、ここで整理します。出土品は洗って、くっつけて、元のカタチに復元する。そのあと写真を撮り、出土品のルーツを調べ、最終的には発掘調査報告書にまとめる。その成果を、ここの展示室や体験コーナーなどで公開しています。我々は“活用”と呼ぶのですが、県民や国民の皆さんに遺跡という文化財を広く知っていただくことも重要な仕事になります。
和田龍介氏はい。我々は文化財保護法という法律に基づいて動いています。文化財は国民共有の財産だから、後世に長く残していきましょう、というのが基本スタンスです。たとえ小さな土器一片であっても、仏像と同じ、貴重な資料なのです。さらに出土品だけでなく、遺跡の実測図や写真などの記録もまた等しく文化財なのです。実測図は、専門家が見れば遺跡の元の状態が分かるようルールに則って描かれますので、開発で壊された遺跡の代替になるわけです。
和田龍介氏はい、そうです。写真を撮り、図面を描き、必ず報告書にまとめます。そこまでやって発掘調査は完了です。
和田龍介氏次の世代にどうやって残していくかが一番難しい仕事だと私は思っています。たとえば、紙が劣化しないよう、調温調湿された部屋で保存する。特に重要な物は、防火設備のついた部屋で保管する。そして近年、図面や写真をデジタルで残すという新たな手法が出てきました。そのデジタル化にどう対応するかが課題でした。
和田龍介氏フィルムでなくデジタルカメラを使う場合、何千万画素以上で、こういうフォーマットで撮るべし、という指針が文化庁から示されています。その指針に基づいてフルサイズの一眼レフで撮るのですが、データ量が非常に大きくなるのです。画像1枚で40MBなど、とても今までのサーバーや外付けハードディスクの容量では対応しきれません。保存はもちろん、バックアップはどうする?と考えた時に、真剣に探し始めたのがきっかけですね。
和田龍介氏まず、ブルーレイで一番容量が大きいのはどれか?と探す中、光ディスクに電子情報を残すためのJIS規格が策定されていることが分かりました。
そのJIS規格の機器をパイオニアさんが、ディスクを三菱ケミカルメディアさんが製品化されているのを見つけました。様々な媒体がある中で容量・保管性・コストのバランスが最も良く、データの安全性を確保できることが利点と感じました。
和田龍介氏規格化されていることは、私たち役所の人間にとって重要です。将来にわたって残っていく可能性が高いわけですから。
和田龍介氏はい、ひとつの遺跡が1枚に収まるようになったのが大きいですね。画像はもちろん、文書や報告書はPDFにして、遺跡ごとに分けて1枚で保存できます。ただ、長くて3年間続けて発掘する現場もあり、これまで100GBで5枚ほど使ったケースもありました。それでも、何十GBほどのデータをDVDに何十枚とバックアップしていた時に比べれば、管理ははるかに楽になっています。
和田龍介氏古いものでは、昭和30年代からの図面や写真が大量に記録保存室に残っています。それ以降のカラー写真も、色の劣化は否めません。以前は図面などはマイクロフィルムにしていましたが、火災の心配もゼロではない。時間はかかりますが、古い資料をデジタルに移行しなければと考えています。
和田龍介氏光ディスクと、それを読み書きできる機械がずっと残ってほしい。ブルーレイディスクは汎用的な規格ですので、将来的に永く、安定したシステム供給されることを望んでいます。実は以前にも画像データの統一システムが存在していたのですが、今では機械はない、呼び出すソフトもないという状況になっています。元の画像データは残っており、そこからまた新しいメディアに呼び出すのですが、今までのものが無駄になります。とにかくこのシステムがずっと残り続けてほしい。私たちの世代で、文化財という国民の財産を失うわけにはいきませんから。
遺跡の発掘調査と記録・出土品の保存、そして文化財を活用するのが我々の重要な仕事です。特に古代体験といって、出土品をもとに昔の生活ぶりを追体験してもらうことに取り組んでいます。敷地内の古代体験ひろばでは、発掘調査のデータで得られた縄文時代・弥生時代・奈良時代の建物をほぼ実寸で復元し、火おこしや土器を窯で焼くこともできます。トータルで遺跡に親しみ、追体験できる施設を整えています。