取材日:2019年3月26日
北海道札幌市で、玄関先や駐車場まわりの雪を融かすロードヒーティングなど、さまざまな「融雪商品」を手がける(株)ヒルコ様。このたび、積雪の状況をネットワークカメラで遠隔監視し、ロードヒーティングをON/OFFするシステムにアイ・オー・データ機器のLTEルーター「UD-LT1」を導入されました。賃貸マンションのオーナー様の「ランニングコストを少しでも抑えたい」という要望に応えるこのシステムに、「UD-LT1」がいかに役立っているのか。導入の経緯とメリットについて(株)ヒルコの代表取締役 山内康民様と開発部次長の伊藤満様にお話を伺いました。
山内様冬の北海道の都市部では、雪かき(除雪)をしても捨てる場所がなかったり、高齢化で作業が難しいケースがあるため、住宅まわりに「融雪機」が設置されています。弊社は、昭和56年の創業当初から、玄関先に設置する融雪機や、屋根融雪システムなどの、雪を融かす機器を製造販売しています。
伊藤様「冬をもっと快適で便利に過ごす」をキャッチフレースに、さまざまな商品を企画開発。お客様の要望に合わせて販売し、施工やメンテナンスも実施しています。融雪機専門、屋根融雪専門の会社、ロードヒーティング専門の設備会社などはありますが、それらをトータルに手がけているのは弊社だけです。
山内様投入した雪をすぐ融かす融雪機は、埋設型や移動式があり、投入した雪をゆっくり融かす融雪槽という商品も扱っています。地面に積もった雪を融かすロードヒーティングに関しても、熱源として電気、ガス、灯油とすべて揃えています。また屋根に積もった雪を軒先で融かしたり、または堰き止めてゆっくり融かしたりする屋根融雪システムも揃えています。
伊藤様札幌では、賃貸マンションにロードヒーティングがないと借り手がいないほど必需品に近いものです。
山内様弊社のロードヒーティングは、降雪センサーで降雪・外気温・路面温度の3つの要素を感知して自動でオンオフを繰り返す仕組みです。降雪センサーの降雪検知部にはヒーターが入っていて、雪が降雪検知部に降ってくると融けて水分を感知し、作動します。
伊藤様ただし、降り終わっても雪が残る場合がありますから、やんだあと30分なり1時間なり運転するようにセットしておきます。でも、融雪する面積、場所、季節によって融ける時間の変動が非常に大きい。雪が多い寒い時期に合わせてセットすると無駄に運転してしまい、暖かい時期にセットすると融けきらない。いったんセットしても思うようなコントロールがなかなか出来ません。
伊藤様昔はとにかく融けてくれれば充分でしたね。でもその時代は灯油が1リッター40円ほどで、今は90円〜100円の時代。維持コストを削減しなくてはいけない、となってきて。一般家庭のお客様は手動でオンオフできるリモコンがついています。ところがアパートやマンションは、オーナー様が別の場所にお住まいで、操作する人がいないため、結局シーズンを通して自動運転にしておく場合がほとんどです。
山内様灯油代も上がっていますし、電気料金も東北の震災の影響で上がってきていますので。マンションのオーナー様から「なんとかランニングコストを少しでも抑えたい」というご要望があって、降雪状況を遠隔監視できる商品を開発した次第です。
伊藤様最初は、ロードヒーティングの個々の運転状況を把握できるよう、データ収集するシステムをつくろうと目指しました。で、ロードヒーティングの融雪状況を監視するカメラ画像と、降雪センサーの運転情報とをスマートフォンで見られるシステムを2016年に開発したのですが。つくってみて、これはそのままロードヒーティングのオーナー様向けに販売していけるのではないかと模索を始めました。
伊藤様開発当初は建物に既設の有線LANを利用するという発想でしたが、いざ本気で展開しようとすると制約が多く、モバイル系の機器を探しました。しかし通信費が最も安くても当時で月額2,000円、今でも月額1,000円、1年で12,000円以上かかる。実際に使うのは12月〜3月の4ヶ月なのに、これではオーナー様に負担をかけてしまう。そんな折、2017年に展示会でLTE回線の安価なデータ通信を知り、契約に至りました。
伊藤様最初はモバイルルーターをサンプルで取り寄せましたが、バッテリーの寿命に問題がある。少なくとも3年で交換しなくてはいけないと聞いており、そのまま使うのは厳しい。私たちの用途は固定設置なので、いいものはないかと探した結果、アイ・オー・データ機器のLTEルーターにたどり着きました。魅力はまず、最も低コストだったこと。他社製品はいろいろな機能が載っていてお値段が倍以上していました。
伊藤様次に、リブート機能がついているので安心です。いま、試験的にモバイルルーター経由で屋根融雪を遠隔監視しているお宅があるのですが、年に一度は止まってしまいます。弊社の商品は24時間連続監視する必要がないので、わずかな時間リブートがかかるよりフリーズされるほうが困る。オーナー様がそばに行けないからルーターをつけているわけですから、そこが一番重要なポイントです。今は1日1回、自動でリブートがかかる設定にしています。
伊藤様もうひとつ、使用温度範囲がマイナス20℃〜60℃ということ。札幌は今年、何十年ぶりかに最高気温がマイナス10.1℃という日があって。マイナス20℃から保証していただけるのは安心です。夏場も、札幌でも日が当たると制御盤の中は60℃になると言われており、ほんとうに安心して使えるルーターだと思います。
伊藤様あと、ダイナミックDNSが無償で使えるのはメリット。弊社のシステムはスマートフォンから直接現場にアクセスする方式をとっているので、通信費を安くできてありがたいと思っています。
伊藤様これまで2シーズン、冬も夏も稼働してトラブルがいっさいないので、安心して使えるルーターと思っています。
伊藤様弊社のロードヒーティング用遠隔監視システムは、降雪センサーを必要最小限に自動運転させるようセットして運転時間30%削減し、なおかつスマートフォン操作でこまめにON/OFFすることで、運転時間を半分にまで減らせるようになりました。
伊藤様新潟の方ですが、灯油代が月に20万円ほどかかっていてお困りでした。秋にシステムを導入させていただいたところ、コスト削減の効果があったということで、シーズン中の2月に1セット追加で設置していただきました。
伊藤様スムーズでしたね。一度設定すると、構成ファイルのバックアップファイルが作成できるので、次からは設定ファイルをインポートするだけで終了です。アイ・オー・データ機器のHPで設定画面の説明も出ていますので、分かりやすくなっています。
伊藤様あと、専用の取付金具で縦置きできるのがいい。制御盤の中に入れてスムーズに設置できます。アンテナの収まりもいいですね。
伊藤様オーナー様から「せっかくカメラを取り付けたのなら、監視カメラ代わりにならないの?」という要望が寄せられています。現状はコスト優先で、静止画前提の割安なSIM 契約にしていますが、動画に対応することはもちろん可能です。アイ・オー・データ機器のネットカメラ「Qwatch」やハードディスクを本システムに追加することも考えています。
山内様「LTEルーター」のような情報ベースを持っていると、商材が広がります。これを中心に、オプションでさまざまな情報機器を取り付けるお客様が出てくるでしょう。ご提案できることが拡がることを、ますます期待しています。