取材日:2021年5月27日
大阪府豊中市で漢方内科やアレルギー科及び耳鼻咽喉科の診療を行うひまわりクリニック。早くから医療現場のICT化に必要性を感じていた吉岡明立院長に、アイ・オー・データ機器社のオンライン資格確認端末導入の経緯や効果を伺いました。
吉岡先生40年ほど前にひまわりクリニックを開業しました。開業当初、鼻骨を骨折した患者様の整復手術。人手が足りず保険証の確認は後にして、とりあえず処置を行いました。患者様は「お金は明日払いに来る」と言い残し帰宅。ですが、翌日になっても来院されることはなく、記載されている住所に連絡するも、連絡が取れません。当然、その患者様は再来院することなく、医療費は未回収となりました。
保険資格確認で苦い思いをしたという開業医は少なくないと思います。健康保険は例えば、結婚や転職、引っ越しなどによって一時的に資格を喪失していることがあります。しかし、保険証の適用ルールをしっかりと把握している患者様は少数でしょう。その結果、資格確認ができなかった患者様については、クリニック側で医療費を回収する必要があり、その手続きには、とても手間がかかります。場合によっては、時間とコストが嵩んでしまうため、未回収で終わらせてしまう、ということもあります。
吉岡先生ICT技術による医療業務の最適化、効率化は必須。私自身、以前からコンピューターやICTに興味を持っていたこともあり、オンライン資格確認システムについては、発表されてからすぐに申し込みました。オンライン資格確認はマイナンバーカードのICチップ、もしくは健康保険証の記号番号などで患者の保険資格情報が確認できるシステム。特にマイナンバーカードで行う顔認証であれば、たった数秒で資格確認が可能です。これはぜひ早急に活用したいと思いました。
保険証のシステムへの登録は、ミス無く行うことがレセプト請求時の返戻を無くす重要なポイントです。登録の際にミスがあると、結局作業をやり直すことになります。しかし、オンライン資格確認システムではその登録作業が一切なく、迅速に資格確認を行い、その情報をレセコンに取り込むことが出来ます。これは、業務が効率化するというだけでなく、正確な情報を登録できるという点でもメリットが大きいと思います。
資格確認されたデータは、日医標準レセプト「ORCA」との連携もスムーズでした。これまで導入していたシステムを一変させることなく、簡単に導入できるというのも利点でしょう。
吉岡先生オンライン資格確認システムの導入にあたって、カードリーダーと合わせて揃えなければならないのが資格確認専用端末です。カードリーダーで読み取られたデータと、支払基金・国民健康保険中央会が保管する情報をつなぐ役割があります。当院では日本医師会ORCA管理機構が推奨している「APX-MEDICAL/QC(株式会社アイ・オー・データ機器)」を導入しました。
A4用紙の3分の1ほどのサイズ。思っていたより小さかったですね。非常にコンパクトな機器なので、クリニックの受付や受付台の下に置いても違和感なく使うことができます。オンライン資格確認に必要なアプリやソフトウェアがすでに搭載されており、サポート体制も整っているので、安心感がありました。また、「APX-MEDICAL/QC」には、オンライン請求のアプリも設定されているのも大きなメリット。本来であればオンライン請求は、登録や設定をしなければなりませんが、「APX-MEDICAL/QC」はオンライン資格確認とオンライン請求が同時にできるスペックを備えています。
私の場合、このようなシステム構築はベンダーに頼らず、自力で運用しています。そのため、ORCAもAPX-MEDICAL/QCも自分で設定し、オンライン資格確認システムを構築しました。しかし、アイ・オー・データ機器社のサポートがなければ、今回のようなスピーディーな構築はできなかったと思います。
吉岡先生オンライン資格確認システムの導入によって、患者様の保険資格を懸念することなく安心して診療ができるようになりました。多くの開業医が不安に感じていた、資格過誤による医療費の未回収という課題も徐々に解消されていくのではないでしょうか。再請求の手間が省けるというのは、レセプト業務に携わるスタッフの負担軽減にもなります。事実、当院のスタッフからは「事務手続きが楽になり、作業の時間短縮につながっている」という声が挙がっています。
今後、オンライン資格確認システムやマイナンバーカードによる受付がスタンダードになれば「保険証を忘れて取りに帰る」、「役所に確認する」といったことも減っていくでしょう。つまり、患者様も通院しやすい社会になると思います。
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、特に開業医は深刻な経済的ダメージを受けています。医師、スタッフ、患者様の三者にメリットが見込めるオンライン資格確認システムの導入は、このような状況を打開する第一歩になると考えています。