取材日:2022年6月28日
埼玉大学教育学部付属中学校は、埼玉県唯一の国立中学校として、様々な先導的な取り組みを行う地域のモデル校です。同校では教育総合ポータル「ラーニングスケルトンAI」を導入し、ICTをフル活用した授業を実践しています。中心となって活用を進めているのは、技術を担当する木村僚先生。全校12クラスの技術の授業を担当し、さらに学校全体のITインフラの導入にも深くかかわる木村先生に、「ラーニングスケルトンAI」を使った授業を見学させていただくとともに、その方法や効果、学校におけるICTのあり方など、幅広くお話を伺いました。
木村先生「ラーニングスケルトンAI」は、生徒たちが自分の思考を整理するためのツールとして使いました。テンプレートなど、ある程度の枠組みが用意されているのでまとめやすいようですね。要点にたどり着きやすく、率直に意見を書けるのがよい点だと思います。もちろん全員がオンラインでつながっていますから、共有も簡単です。
木村先生AIによる探究学習の機能もよく使っています。生徒が記入した内容に合わせて、AIが関連キーワードをサジェストしてくれます。この関連キーワードについて、インターネット検索で調べたりできるのですが、「ラーニングスケルトンAI」上では、危険なURLなどはブロックされるので安心です。
木村先生実は、当校ではドリルを使った学習にそこまで注力していないという背景がありまして、「ラーニングスケルトンAI」にかかわらず、授業ではあまり活用していません。しかし、せっかくアカウントがありますし、生徒用の端末は自由に自宅に持ち帰れる環境ですから、いつでも、どこからでも使えることを説明し、勧めておいたんです。そうしたら、自主的にどんどん取り組み始める生徒が出てきました。オンラインの手軽さのためか遊び感覚で、または英検対策としてなど、自分のペースでそれぞれ取り組んでいます。
木村先生生徒たちの学習の理解度を可視化しやすくなった点は大きいですね。ワードクラウドはよく使っています。「ラーニングスケルトンAI」で作成した全員分のまとめシートを集めて、全キーワードをCSVで抽出し、外部のテキストマイニングツールを使ってワードクラウドにするんです。生徒たちの考えが瞬時にビジュアル化され、授業のどこにインパクトがあったのか、またどんな少数意見があるのか等、振り返りに役立っています。各単元の始めと終わりにこれを行うことで、生徒たちの意識がどう変わったかも把握できます。これがわずか数手の操作で実現するのですから、便利なものです。
木村先生とはいえ、ICT化だけが目的ではありません。今日のように全員で「ラーニングスケルトンAI」を使う時もあれば、そうでない時もあります。どのツールを使って学ぶかは、基本的には生徒たちの主体性に任せたいと思います。紙に書くほうが考えやすいというならば、もちろんそれもありです。当たり前のこととして、多様な選択肢が用意されていることが理想ですね。
木村先生校内のICTについては、業者や製品の選定、セキュリティ対策まで、幅広くかかわっています。特に専門家というわけではないのですが、昨年まで学校に情報システム担当者がいなかったために、私が担当してきたという状況です。国立大の教育学部付属という本校の性質上、大学と連携しながら新しい技術や製品も勉強し、導入していく必要があります。
木村先生一斉に大人数で利用するというのが学校環境の特徴で、しっかりしたネットワークが備わっていなければどうにもなりません。以前はインターネット回線が脆弱で苦労していました。今年度からは学校全体で1Gbps程度を確保できるようになり、問題は解消しているのですが、それまではやりたいことがあっても帯域が足らずにあきらめる、なんてことがしょっ中でした。
木村先生現在は十分なスペックの回線が用意されていますので、クラウドサービスでも安定して利用できています。しかし、将来的に見ればコンテンツ容量は増加の一途ですし、インターネット回線に依存せずに利用できるシステムはいいですね。遅延やトラブル対応で貴重な授業時間を無駄にすることはもってのほかですから。
木村先生現在は学内では私が率先して使っていますが、これからは同僚の先生方に広めていきたいと考えています。そういえば、サービス内容の改善も頻繁に行われていますよね。気付けば何かしらがブラッシュアップされています。今後もより使いやすくなってくれることと期待しています。