取材日:2023年1月26日
首都圏のベッドタウンであり、公立学校の教育の充実でも知られる「子育て王国もりや」こと茨城県守谷市。その南守谷に立地し、今年で創立32周年を迎えたのが守谷市立けやき台中学校です。同校では、デュアルHDMIキャプチャー「GV-LSU200」による画面合成機能を使った英語プレゼンテーションの実践授業を行っています。1Fのパソコン教室(スタジオ)で撮影したプレゼンテーションの映像をライブストリーミングBOX「GV-LSBOX」で校内配信し、4Fの教室にある電子黒板「らくらくボード」で視聴します。
今回、取材させていただいたのは2年3組。指導に当たったALT(外国語指導助手)のジュニ・シュレスタ先生、ヤブキ・ノリヒサ先生、担任の加倉井力(つとむ)先生、また、同校のICT導入を推進する嶋田知成教頭に詳しくお話を伺いました。
嶋田教頭大型電子黒板が全教室に配備されたこともあり、以前から興味のあった画面合成のキャプチャーボード「GV-LSU200」と合わせて、何か新しい授業を行えないかと考えていました。当初はZoomまたはYouTubeと組み合わせようと思っていたのですが、インターネットを介することによる画像や音声の劣化、またプライバシーの観点からの制約がネックになりました。そこで、GV-LSBOXを使った校内配信に行き着いたのです。
嶋田教頭ICT支援員さんと授業のアイデアを考えていたところ、ALTのジュニ先生とヤブキ先生が、「英語のプレゼンテーション能力を伸ばすのにぴったりでは」と提案してくれました。
ヤブキ先生従来から大型ディスプレイを使ったプレゼンテーションの練習は行ってきたのですが、もっと新しくて、面白いことをやりたかったのです。生徒たちの興味を引き、授業に関心を持ち続けてもらうためには、常に新しいものを取り入れることが必要です。今回、グリーンスクリーンの背景でプレゼン資料と自分たちの映像を合成できると説明したら、皆とても喜んでくれました。
嶋田教頭変化の激しい時代です。普段の授業にも新しい取り組みをどんどん採用し、進み続けることが求められています。現状維持を目指す感覚でやっていれば、必ず遅れてしまうものなのです。
嶋田教頭学校のICT化という観点では、2009年の「スクール・ニューディール」で大型ディスプレイが導入され、その後、電子黒板やデジタル教科書の導入が始まり、1人1台端末の時代へと、段階的に進化してきました。これらの資源を使って何ができるかということは、常に考えなければなりません。学習効果につなげることを考えたら、やはり普段の授業に活かせることは重要です。
スタジオで話者の映像と音声、プレゼン資料をGV-LSU200でクロマキー合成、GV-LSBOXで校内LANに配信します。発表チームは校内の仮設スタジオからプレゼンを行い、そのほかの生徒は教室の電子黒板(らくらくボード)で視聴します。
ジュニ先生今日の授業では、グループごとに「クラスで行った調査結果」について英語で発表しました。プレゼン資料はiPadとMetaMoJi ClassRoomを使って、すべて生徒が自分たちで作っています。台詞や画像の内容を考え、見せ方を工夫するなど、皆よく頑張ってくれました。
嶋田教頭とはいえ子どもたちは皆、大人が思う以上のITスキルを持っています。スライドの資料を作るのも実に手早く、要点を押さえてやってくれます。私の所見では、大人の3分の1から4分の1程度の時間しかかかっていませんね。ですから、特別に時間を割くこともなく、通常の授業の中でしっかり資料も作りきっています。
嶋田教頭プレゼン資料を短時間でさっと作ったり、自分の意見や考えを2、3分でまとめてスピーチするといったことは、これから社会に出る子どもたちにとっては重要なスキルになるでしょう。
ヤブキ先生実は教室では、リスニングのテストも行っていたんです。友達のプレゼンテーションの聞き取りをしっかり行うことで、1つの授業内で、「話す、聞く」の両方を学べます。聞き取りがうまくできなかった生徒には繰り返しアーカイブ動画を見てもらえます。また、校内配信の映像はアーカイブ録画もでき、非常に助かっています。
嶋田教頭まったくないですよ。設置にはICT支援員さんの力を借りますが、実際の操作は切り替えのタイミングでポンとボタンを押すだけです。それでいて音も映像も高品質の校内配信ができるんですから頼もしいですね。ほかの製品、手法では資料の細部まで鮮明に表示できなかったり、いろいろと難がありました。アイデアや要望を的確に形にしてくれるICT支援員さん、授業力のある素晴らしいALTや先生方──、関係者がタッグを組んでこの新しい授業を実現しました。
加倉井先生生徒たちは、私が思った以上に素晴らしい表現力をもって、充実した発表をしてくれました。今日は全員に100点満点をあげたいという気持ちです。それぞれ課題も見つかったと思います。今回はグループでの発表でしたが、3年生になったら個人単位でのプレゼンテーションも行いますので、学んだことを忘れず活かしていってほしいです。
嶋田教頭それはそうでしょうね。このような授業は、生徒にとっては負荷の高いものです。表現したいものを自分の中で咀嚼し、見せ方を工夫し、言葉を選び、発表を組み立てることになりますから。席に座って皆で和気あいあいとやるのももちろん1つの授業のあり方ですが、時にはこのような学習で鍛えてほしいと思います。「覚える」ことだけが学びではなく、体験を通して身に着けることも大切です。そこから意欲を生み出し、学力の向上という結果につなげるのです。本学年も、成績がしっかり向上しているという手ごたえを感じています。
ジュニ先生教室でクラス全員の前でプレゼンするのに比べると、配信のほうが断然のびのびやれているんですよ。全員にじっと見つめられるより、カメラの前だけのほうがやりやすいのではないでしょうか。子どもたちの表現力を上げるために、これからもこのようなメディアをどんどん使用して、挑戦していきたいですね。
ジュニ先生GV-LSU200を使って授業を撮影して、デジタル教材を作りたいと考えています。
嶋田教頭コロナ禍で教育のICT化が進みました。今後、状況がどうなるかにかかわらず、この取り組みは続くでしょう。既に大型電子黒板が各教室に配備済みですし、今日の授業のように高品質の配信ができることは実証されています。これからは、例えば1人の先生がオンラインで複数のクラスを教えるなど、様々なスタイルの授業が考えられます。学校と学校をまたがる配信も実現するかもしれません。
嶋田教頭ICT化は、先生方の負荷軽減という観点でも意義があります。教員の人材不足が課題になる中で、いざという時に授業を継続するための備えにもなります。もちろん、今まで通りの対面の学びも重要なものです。新たな施策を取り入れても、その影響・効果をよく見定めながら、慎重に進めていければと思っています。
嶋田教頭学校に適した、価格と性能のバランスよい製品がたくさんありますね。これまで同様に学びの場で役立ってくれると期待しています。現場はなかなかICTを使いこなせないという課題もありますから、ぜひコンサルティングの役割も果たしてくれたらと期待しています。