取材日:2024年7月26日
北海道生コンクリート工業組合は、北海道の生コンクリート工場による組合組織です。生コンクリート製造業に関する指導・教育、情報発信、調査研究のほか、第三者試験機関としての共同試験事業を行っています。同組合のコンクリート技術センターでは、依頼企業様へ提出する試験結果の報告書について、「タイムスタンプ専用端末(APX2-TSI3)」を用いた真正性の担保を行っています。
導入時、クラウドサービスのタイムスタンプも検討しましたが、最終的に選ばれたのはオンプレミスのAPX2-TSI3。試験所長の保坂憲太氏に、本製品を選択した理由、またその導入効果、今後の展望まで、詳しくお話を伺いました。
保坂様依頼企業様からの依頼に応じて原材料などの試験を行い、結果を試験報告書として発行するのが当試験場の主な業務です。従来、試験報告書は紙に押印して発行していましたが、ISO/IEC 17025※認定維持における改善への取り組みの一環として、電子化することになりました。その際、新たな試験報告書の真正性を確保するために、電子証明書、タイムスタンプの付与を決めました。ISO/IEC 17025では試験業務のマネジメントシステム構築が求められており、当組合もこれまでに所内文書や試験データといったさまざまな文書記録の電子化を推進してきました。また、試験報告書と直接関連があるわけではありませんが、令和4年施行の改正電子帳簿保存法も1つのきっかけになっています。
※JIS Q 17025「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」
保坂様紙で試験報告書を運用するデメリットは多々あります。スピードアップは大きな課題で、依頼企業様からもたびたび要望が上がっていました。以前は依頼元の企業様に報告書を届けるために、郵送で2、3日ほど。原本が届くのをお待ちいただく間は、暫定版のPDFで結果を報告するという「二度手間」が発生していました。報告書作成のための事務作業、印刷、押印、封筒詰めなども、数が多ければ手間になってしまいますし、郵送コストも少なくありません。簡素化は重要な課題だったのです。
保坂様試験機関で最も注意すべきことは改ざん対策です。過去にそのような事例があったわけではありませんが、どんなに安全に見える環境でも、リスクがないと断言することはできません。できるだけ改ざんできない形で試験報告書を作成・提供することは、双方にとって極めて重要なことでもあります。電子文書の真正性証明のために、タイムスタンプは欠かせないものなのです。
保坂様シンプルで理解しやすい点を評価しました。指定されたフォルダーにPDFの試験報告書をドラッグ&ドロップするだけと手順も明快です。操作性に関しては、デモを見た瞬間に「これだ!」と確信しました。現在、数名の担当者が報告書の作成に携わっていますが、全員がすぐに理解できるだろうと思いました。
保坂様月間約600件以上という大量の試験報告書を作成しますので、できるだけ簡素化したいと思っていました。比較検討したクラウドサービスの場合だと、アプリケーションを立ち上げてシステム上で操作を行う必要があり、さらに安全に運用するために承認フローも必要になります。一方でオンプレミスのAPX2-TSI3は、フォルダーのアクセス権限を厳密にすることで安全性を担保できます。
保坂様実はランニングコストについても懸念がありました。クラウドサービスでは料金設定が1スタンプあたりの価格になっていることが多く、発行頻度の高い業務で利用すると高額化の懸念があります。その点APX2-TSI3なら、件数を気にせず、いくらでも使えます。まさに“押し放題”なので安心です(笑) また、セキュリティポリシー上、最終データをクラウド上に保存したくないという要件もありましたので、選択肢はオンプレミスのAPX2-TSI3に絞られました。
保坂様紙の試験報告書を削減することができて、さまざまな効率化につながりました。特に、時短という観点では目覚ましい効果が見られています。今は試験終了の10分後にはメール添付で原本をお届けできます。煩雑な運用からも解放され、郵送コストも削減できました。本来、私たちのリソースは事務的な業務ではなく、試験品質を高めることに使いたいと思っていましたが、その点でも大きな成果が得られました。
保坂様 とにかく早くて助かると好評です。今回ニーズに応えることができ、意義を感じています。一方で、業界の一部にはまだ紙文書を重視する文化も残っていますので、これを機に電子データに馴染んでいただければと思います。当組合は業界の指導・教育、情報提供などを行う役割も担っており、今回の取り組みがさらなるDX推進や組合員工場の意識向上につながることを期待しています。
保坂様まだ運用開始してから日が浅く、すべての試験業務には対応しきれていませんが、現段階ですでに確かな手応えを感じています。今後は組合内での利用範囲の拡大、またクラウドストレージ連携なども視野に入れ、ますます活用していければと考えています。
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