アイ・オー独自開発のストレージ技術「拡張ボリューム」や、細部にまでこだわった筐体設計など、NASにとって重要な「信頼性」を高める数々の工夫が施された最高峰のNAS「HDL6-Hシリーズ」。その開発ストーリーや商品にかけた思いやこだわりについてご紹介します。
菅田:「お客様が末永く安心して使っていただけるよう細部に至るまでこだわり、他社に負けない商品を作る」というコンセプトのもと、従来からも取り組んできた温度管理(エアフロー)に加えて、今回、新しいテーマとして着目したのが振動対策です。NASの振動源は主に「ハードディスクの振動」「ファンの振動」ですが、筐体剛性が弱いといわゆる「ビビる」状態となります。そうした振動の増幅を抑えるためにも筐体の剛性を追求しました。
特に筐体剛性を出すためには、部品点数を削減するだけでなく、ネジ止めをリベット固定にするなど、工程のばらつきをなくすとともに組み立て箇所を減らす必要があります。
特に今回は6ドライブ構造のため、梁(はり)を設けることでたわみを抑えて組立後の剛性を高める工夫をしました。これらの様々な工夫から、お客様にも安心してお使いいただける3年保証を実現しました。
菅田:冷却ファンの振動がハードディスクの信頼性に影響を及ぼすことは業界の常識であり、当社の調査でも特定のファン速度(周波数)でパフォーマンスが低下することがわかっています。そのためファンをゴムで固定する方法を採用し、振動を吸収しています。
ファンは消耗品なので、ベアリングが劣化してきた時に振動が増えるため、長期的にもこのゴムで固定した対策が生きてくる筈です。
高橋:「拡張ボリューム」はHDL6-Hシリーズの開発と同時に当社が生み出したRAIDを超える仮想ストレージ機能です。RAIDはデータを冗長化し、ハードディスクの故障に対して耐性がありますが、冗長性の範囲を超えるハードディスクの同時故障が発生するとボリューム全体のデータを失ってしまう弱点があります。
また、RAIDで容量を拡張するためには大量のデータ移行作業が必要でした。そうした課題を解決するアイディアが「拡張ボリューム」でした。「拡張ボリューム」は、データの冗長性や保全性というRAIDの特徴をもちつつも、データを維持したまま容量を拡張でき、ハードディスクの同時故障を避ける運用も可能となりました。万が一同時故障が発生した場合でも、その影響を最小限に抑える工夫も盛り込まれています。
武石:RAIDのリビルド(再構築)を行う際に、空き領域も含めた全セクタをコピーするため、時間もかかりパフォーマンスも低下するという課題がありました。
そこで「拡張ボリューム」では、リビルドを行う際にファイル単位でのコピーのみ行いパフォーマンスの向上を図っています。
武石:元々RAIDはデータを維持したまま容量を増やすことができないため、これまでは事前に保存されたデータをすべて移行する作業が必要だったわけです。これを回避できないか、データを維持したまま動的に容量を増やせないかと考えて自社開発に挑戦しました。さまざまな環境で運用できるようチューニングしたのですが、ここに時間がかかりました。
今後は外付けハードディスクを増設し「拡張ボリューム」の構成を追加できるようにすることも検討しています。あとレプリケーション(バックアップ)の最適化や外付ハードディスクの暗号化、データコピー機能にも注目してください。時間のかかる処理をバックグラウンドで行うようにしたため、同時に他の操作を行うことができます。今後もよりよい使い勝手を実現するためにとことんこだわっていきます。
武石:「拡張ボリューム」は、NASの信頼性や効率を高めるアイ・オー独自開発の機能です。「拡張ボリューム」の名称は「RAIDからさらに機能を拡張する」「容量をスピーディに拡張する」という意味で名付けました。これからも「拡張ボリューム」の機能自体を拡張できるよう開発に取り組んでいきます。