すごく個人的な話をさせてもらうと、現在筆者宅は建て替え中であり、その間、近くのアパートで仮住まいをしている。2Kの間取りに家族4人で住んでいるため、たいへん狭っ苦しい。もともと一戸建てから引っ越してきたこともあって、荷物が入りきっておらず、別にトランクルームを借りているほどである。
あまりにも狭いので、新居に移るまではできるだけモノを増やさないことに決めている。しかしタイミングの良くないことに、テレビ録画用のUSB HDDの残り容量があとわずか。PCの内蔵SSDもギリギリでやりくりしていて、録画用HDDとバックアップ用HDDを追加したくてたまらない。
しかし、あいにくリビングのテレビ周りは大混雑。自作テレビ台の裏側はおぞましい配線地獄だ。こんなところに新たにHDDを追加することなんて考えたくない。倉庫のようになっている自宅の仕事部屋だって、ついでにいえばオフィスのデスクの上だって、常に散らかっていて新しく買ったものを置く気になんかとてもなれない。
と思っていたら、なんだかとってもオシャレで、我が家にもオフィスにも美しく設置できそうなUSB HDDがアイ・オー・データ機器から発売された。これなら狭くても、小汚く散らかっていても、スタイリッシュに増設できるのではないか。ってことで、どれくらい“シャレオツ”にレイアウトできるのか、このUSB HDD「HDEL-UTシリーズ」をいろいろな場所に置いてみることにした。
外付け用USB HDD「HDEL-UTシリーズ」は、「インテリアにもなるHDD」をコンセプトに開発されたUSB 3.0対応HDDだ。カラーは目に映えるSunset Orange、やや薄紫に近いTwilight Blue、落ち着いた白のMoon Whiteという3種類のバリエーションが用意され、それぞれ2/3/4TB容量のモデルをラインアップしている。
ストレージという意味では、オンラインのクラウドストレージや、高速な内蔵SSDなどに話題をさらわれ、ごく一般化してしまったUSB HDDは注目されることが少なくなってしまったかもしれない。が、それでも大容量を実現し、最大5Gbpsという高速さでデータ転送できるUSB 3.0対応HDDは、いまだ最も重要なデータ保管用デバイスだ。SSDやネットワークドライブであるNASに比べ比較的リーズナブルな値段で入手できるのもポイントだろう。
このHDEL-UT、インテリアになるとうたっている通り、大きな特徴の1つは、なんといってもデザイン性の高さだ。パッと見では、模様や凝った造形を施しているわけでもなく、全く飾り気のない、ソリッドなスクエア形状をしている。正面も、側面も、完全にまっさら。まるでただの箱のようだ。HDDによく付いているアクセスランプすらない、というか、背面に追いやられていて、これがHDDだとひと目で見抜く人はそうそういないのではないか。
そして、最大のポイントと言えるのが、背面に設けられた端子の配置の工夫。一般的な製品だと、USBケーブルと電源ケーブルは背面にまっすぐ差し込むことになるため、ケーブル末端のコネクター部分の長さ+αの分だけ背後の壁などからHDD本体を離して設置せざるを得なかった。ところが、HDEL-UTでは端子部分が真下に向けて取り付けられているため、接続したUSB・電源ケーブルも真下に向かうことになる。
その背面部分は大きくえぐられている。接続したケーブルは背面下部に設けられた切り欠きのようなところから出てくるので、HDDの背面をぴったり壁などにくっつけてもケーブルを挟むことはない。今までにもありそうでなかったちょっとした工夫なのだが、効果は抜群だ。これなら、ごっちゃごちゃな狭っ苦しい場所でも、美しく置けるはず!
手始めに、いろいろなPC周辺機器やケーブルや雑誌や書類なんかが散乱したまま、とりあえず普段の仕事には差し支えないので片付けずに使っているオフィスデスクの上に、HDEL-UTのMoon Whiteを置いて使ってみることにした。
デスクの天板がガラス素材で、全体的にホワイトを基調にしたカラーリングだったこともあり、Moon Whiteの筐体はどこに置いても違和感がない。というか、ほとんど目立たず溶け込んでいる。散らかりまくりなデスクの上にさらにモノを追加したはずなのに、増えた感覚は一切ゼロ。きっと5台くらい増設しても気にならないのではないか!?
普段よく使っているのはMacBook Airだが、ときどき必要になるWindows 10のデスクトップPCはデスクの下、床に直に置いているので、デスク上に置いたHDEL-UTから真下に伸びるUSBケーブルと電源ケーブルは、ちょうど都合がいい。本来はUSB HDD自体もデスク下に追いやって目立たなくしてしまいたいところだが、HDEL-UTならあえてデスク上に置きたくなってしまう。
なお、HDEL-UTには、PCの内蔵HDDなどの指定フォルダを自動バックアップしてくれる「Sync with」や、コピー速度を高速化する「マッハcopy」といったWindows用アプリケーションが付属している。これらも組み合わせることで、今後本格稼働することになるWindows 10デスクトップPCの、メインのバックアップストレージとして大いに活躍してくれるだろう。
弊社オフィスの部屋の隅には、ルーターやハブ、NASなど、ネットワーク関連の機材をまとめて置いているラックがある。ごちゃごちゃ、というわけではなく、それなりに整理されている場所なのだけれど、ここにはやや派手めのカラーリングのSunset Orangeを置いてみた。
HDEL-UTは、最近の多くのルーターが備えるUSBポートに差し込むことで、ルーターをNAS化することができる。また、NASの増設用外付けHDDとしても活用できるので、このようにデスクで使うPCから離して、ルーターのそばに置くことも想定できるだろう。
最初、オレンジという色はかなり“浮く”んじゃないか、と思っていたのだけれど、背景のグリーンのブラインドとあいまって、爽やかで、まさしくインテリアな雰囲気をかもし出している。全体的には決しておしゃれなオフィスではないはずなのに、この一角だけがちょっとカッコいい。
もちろん、ルーターに接続したり、NASの増設用として利用した場合のパフォーマンスには全く問題なし。ルーターやNASだと、USB 2.0ポートしかないものもまだ多いかもしれないけれど、本来の性能を発揮するためにも、ぜひUSB 3.0ポートのあるルーターやNASで使いたいところだ。
仕事部屋といっても、単にデスクが置いてあるから仕事部屋と呼んでいるだけであって、実体は物置そのものである筆者の仮住まいの一部屋。いつもはデスク上にモノが散乱しているのだけれど、さすがにそれだとPCもHDDも一切置けないので、一時的に横によけたうえで設置してみた。
多少片付けたところで周囲は足の踏み場もないことに変わりはない。でも、HDEL-UTを置いたとたん、ものすごく片付いているように見えるのは気のせいだろうか。外付けUSB HDDがあること自体、データをきっちり管理しているというイメージが湧いて、結果片付いているように感じるところもあるのかもしれない。
散らかっている場所ばかりの例を挙げても悲しくなるだけなので、きちんと片付いた場所にTwilight Blueを置いてみたところ、こちらは当然と言えば当然だが、本当にシンプルでスタイリッシュで美しい。なんだか芳香剤の香りが漂ってきそうな爽やかさすら感じる。こんな環境なら毎日仕事が楽しくなるに違いない。いま仕事が楽しくないというわけではないが。
あちこちにHDEL-UTを置いてみたが、最大の特徴であるUSB・電源ケーブルを真下方向に接続するデザインは、他の製品と比べて本当にわずかな違いのはずなのに、ここまでレイアウトの仕方や使い方が変わってくるものなのかと驚いた。きれいにぴったり置けるだけで、とってもすがすがしい気分になれるし、写真でも見た目のすっきり感はけっこう伝わったのではないだろうか。
実際のところ、HDEL-UTは決して持ち運びに適するようなコンパクトな外付けHDDではない。据え置き用HDDなりの大きさと重さがあるから、必ずどんな狭いところにでも置ける、とはさすがに言えない。少なくとも筐体のサイズ分のスペースは空けないといけないだろう。
でも言い換えると、筐体のサイズ分さえスペースがあれば、コネクターやケーブル分の背面側の余裕は一切考えなくてもよく、それだけで配置の自由度がまるで違ってくる。このすっきり感を実現する工夫、ぜひともUSB HDDだけでなく、アイ・オー・データ機器の他の製品にも採用してくれることを願いたい。
(PC Watch 日沼諭史 2015年10月)