【インタビュー記事】「GigaCrysta」誰もがより快適に楽しめるゲーミングモニターを目指して

ゲーミングモニター「GigaCrysta」

(写真)ゲーミングモニター「GigaCrysta」

(記事公開日:2019年8月29日)

2014年10月にゲーミングモニター「GigaCrysta(ギガクリスタ)」ブランドを発表してからまもなく5年。にぎわいを見せるゲーム市場とともに進化を続けるGigaCrystaブランドについて、開発担当の山下さんと企画担当の澤野さんに、これまでの経緯や想いを語ってもらいました。

マルチメディア向けに出発したGigaCrysta黎明期

左:企画担当の澤野さん  右:開発担当の山下さん

(写真)左:企画担当の澤野さん  右:開発担当の山下さん

2014年11月、GigaCrysta ブランドの第1弾として、23.8型ワイドモデル「LCD-RDT241XPB」と27型ワイドモデル「LCD-RDT271XPB」を発売しました。発売前に参考出展した東京ゲームショウ2014で、前評判が高かったことを記憶しています。

「LCD-RDT241XPB」と「LCD-RDT271XPB」

(写真)「LCD-RDT241XPB」と「LCD-RDT271XPB」

GigaCrystaを発表した当時、日本市場においては、まだ、モニターは現在のようなゲーミングという形ではフォーカスされていませんでした。海外メーカーのゲーミングモニターが出てきてはいましたが、我々はどちらかというとそこは横目で見ていたようなところが正直ありました。ゲーミング向けというよりはマルチメディア向けとして、「ギガクリア・エンジンⅡ」という映像処理ICを搭載し、きれいで高画質を実現したモニターとして市場に投入しました。

ゲーミングを意識したGigaCrysta開発の始まり

ハイリフレッシュレートのゲーミングモニターが世の中に徐々に増えてきて、そういったモニターはゲームユーザーにも人気が出てくるようになりました。時代がシフトしているのを我々も感じはじめ、ハイリフレッシュレート、高速応答を求めるパネルを使ったラインアップを増やしていくことに本格的に取り組み始めました。

開発においては、ハイリフレッシュレート、応答速度、フレーム遅延を重視して、より快適にゲームができるようにゲームユーザー視点で進めていきました。

リフレッシュレートの違い

(図)リフレッシュレートの違い

リフレッシュレートは、1秒間に最大何回映像を書き換えるかを表し(※)、リフレッシュレートが高いほど、なめらかで美しいゲーム映像を表示できます。
(※)リフレッシュレートが60Hzの場合は1秒間に60回、144Hzの場合は1秒間に144回の書き換えを行います。

遅延について

(図)遅延について

遅延には、液晶パネルの応答速度に加え、映像処理ICの内部フレーム遅延があります。一般には応答速度だけが強調される場合が多いですが、実際には、内部フレーム遅延もあるので、結局トータルで見ないと本当に速いということは言えないわけです。俊敏な操作が必要とされるゲームでは、この遅延が大きいとネックとなります。

PCやゲーム機からモニターに映像信号が入ってきた後、モニター内部の映像ICで処理してから液晶パネルに出力します。ここまでを内部フレーム遅延と我々は呼んでいます。信号が実際にパネルに到達してから、ユーザーの目に色変化として表示されるところが応答速度になります。当社では、内部フレーム遅延と応答速度を分けてスペックを公表しています。内部フレーム遅延が実際にどれぐらいかを明示しているメーカーはかなり少なく、当社GigaCrystaシリーズの特長の1つと言えます。

このような技術的なことについて十分に理解されているユーザーもいらっしゃいますが、混同してしまっているユーザーもいらっしゃるように見えるので、なかなか理解するのが難しい内容なのかもしれません。

(参考)リフレッシュレートと内部フレーム遅延について

ボタンを押しやすい設計

(写真)左から、LCD-GCQ271XDB、LCD-GC242HXB、LCD-GC251UXB

●LCD-GCQ271XDBの場合
(リフレッシュレート:60Hz/内部遅延時間:約0.04フレーム)
1フレーム60Hzなので1回の映像表示時間は約16.7ms(1フレーム÷60Hz)。
内部遅延時間は約0.66msなので約0.04フレーム(0.66ms÷16.7ms)

●LCD-GC242HXBの場合 (リフレッシュレート:144Hz/内部遅延時間:約0.05フレーム)
1フレーム144Hzなので1回の映像表示時間は約6.9ms(1フレーム÷144Hz)。
内部遅延時間は約0.35msなので約0.05フレーム(0.35ms÷6.9ms)

●LCD-GC251UXBの場合 (リフレッシュレート:240Hz/内部遅延時間:約0.05フレーム)
1フレーム240Hzなので1回の映像表示時間は約4.2ms(1フレーム÷240Hz)。
内部遅延時間は約0.22msなので約0.05フレーム(0.22ms÷4.2ms)

トータルバランスを考えた応答速度

オーバードライブ機能により、応答速度を高速化しています。応答速度の数値は通常ms(ミリ秒)で表され、オーバードライブ機能によって数値が変わります。数値が小さいほど動きの速いシーンの残像感を低減し、動きの激しい映像やゲームでもクッキリした映像が楽しめます。

モニターの残像チェック

(写真)モニターの残像チェック

このオーバードライブ機能は、中間階調の応答速度を高速化する技術のひとつです。色変化をより急峻にするのですが、例えば、黒からグレーにする場合、一旦、白の方向まで上げてからグレーに落とすオーバーシュートを発生させて、応答速度を速くしています。いきなりグレーに到達できれば良いのですが、それだと遅くなってしまうので、白色を経由させています。本当はグレーなのに、白色が出てしまうわけです。逆パターンもあって、白からグレーの場合、一旦、黒っぽい色が出てしまいます。

そのため、オーバードライブを強くかけすぎると、応答速度は速くなるわけですが、本来の色ではないものが出てしまうという副作用があります。新商品の開発の際、機種ごと、パネルごとに、ユーザーにとってどこが一番最良のバランスかを考えるのがとても苦労する点です。アナログ的なやり方かもしれませんが、映像を実際に見ながらどこが良いバランスかを細かく検証していきます。

こういったことは、ユーザーの皆さんすべてがご存知なわけではなく、商品のスペック(数値)だけに目がいきがちですが、トータルバランスが大切だと思っています。数値だけを比較して購入された場合、体感のギャップがあり、感じ方の個人差もがあります。当社では、オーバードライブのかける強さを選択できる仕様にしていますので、応答速度が遅くなっても、トータルとしてゲームがしやすいという評価もあるわけです。

ゲームがより便利に使いやすくできるような商品ラインアップ

GigaCrystaの商品ラインアップはゲームのジャンル分けを意識しています。本格的なPCゲームユーザーには、①ハイリフレッシュレートや応答速度が求められるFPS向けモデル、②高解像度や広視野角パネルなどきれいにゲーム映像を楽しむためのMMORPG向けモデルをラインアップ。③家庭用ゲーム機PS4、Switchなどライトユーザー向けには、比較的安価なエントリーモデルなど、幅広いユーザー層にご提案できるようになりました。ゲーミングモニターの市場もそういった流れになっています。

レースゲームでは、ハイリフレッシュレートによりなめらかで美しい映像

(写真)レースゲームでは、ハイリフレッシュレートによりなめらかで美しい映像

FPSゲームでは、内部フレーム遅延が小さく、操作と表示のズレが少ない

(写真)FPSゲームでは、内部フレーム遅延が小さく、操作と表示のズレが少ない

ライトユーザーはテレビでゲームする方が多かったのですが、最近では、家族や子供がテレビ視聴するためなかなか占有するわけにもいかず、ゲームに集中したい方が、自分専用のゲーミングモニターとして購入されるケースも増えています。

ゲームに特化していながら、ゲーム以外でもPCとつなげば、インターネット利用やネット動画の視聴、さらにテレビチューナーもつなげばテレビにもなりますから、コストパフォーマンスが高く、満足いただけているのだと思います。

プロゲーマー・eスポーツ・国体。
スタート時の想定以上に盛り上がりをみせるゲーム市場。

左:企画担当の澤野さん 右:開発担当の山下さん

(写真)左:企画担当の澤野さん  右:開発担当の山下さん

GigaCrystaを発表した当時は、ゲームモニターの市場が今ほど大きくなるとは思ってもいませんでした。まさか国体が開かれるなんて想像もできませんでした。本当に驚きです。ヘビーユーザーが増えるだけでなく、ライトユーザーの裾野もまだまだ広がっていくと感じています。

ゲーム市場におけるGigaCrystaの成長に欠かせないのがユーザーの声やつながりです。東京ゲームショウ、C4LANなど、ゲームユーザーが注目しているイベントや集まる場所で、GigaCrystaを知っていただき、粘り強くGigaCrystaの良さをお伝えしていくことがとても大切だと思います。

C4LANへのイベント参加では、当初ラインアップが少ない状態のとき、「I-O DATAってゲーミングモニターをやっていたんだ」という声から、次の年には、「GigaCrystaは俺も使っているんだよ、これいいよね」といった声に変わり、分かりやすい変化を実感しました。

また、2018年4月に発売した、240Hzハイリフレッシュレートモデル「LCD-GC251UXB」は、プロゲーミングストリーマー集団「父ノ背中」さんから、凄いモニターだという評価をいただきました。プロゲームチームの声は、当然ながらゲーマーの皆さんに響くものであり、さらにGigaCrystaへの注目が集まる形となりました。

開発側として、良いものを作り続けるのは当たり前ですが、それだけでは駄目なんだと思います。イベントで直接ユーザーの声を聞き、ネットで発信されるユーザーレビューも大切にしていくことが必要だと思います。ユーザーの厳しい声は改善につなげ、ユーザーからご評価いただけたところは、さらに伸ばしていくような商品開発を継続していきます。

これからのGigaCrysta

今年7月に発売されたフルHD対応27型のGigaCrysta「LCD-GC271XB」

(写真)今年7月に発売されたフルHD対応27型のGigaCrysta「LCD-GC271XB」

ご評価いただいている、色の綺麗さ、応答速度、全体バランスやコストパフォーマンス、これらを突き詰めていくことはもちろんですが、I-O DATAならではの強みやこだわりをしっかり商品に反映していければと思います。

内部フレーム遅延を公表していたり、内蔵スピーカー、リモコンが付いているなど、「I-O DATA」だからこそやれる強みを意識した商品開発をしてまいりましたが、今後もユーザーの皆様の声も大切にして、便利な機能を提案し、そのこだわった部分を是非使っていただきたいです。

そして、画面サイズの大型化やフルHD、WQHDから4K解像度、ゲーミングモニターとして便利な機能の追加など、まだまだご提案したいことは多く、ラインアップの充実を図ってまいります。画面サイズについては、今年7月に、これまで23.8型、24.5型がメインでしたが、フルHD解像度に対応した27型の「LCD-GC271XB」を発売したばかりです。

ゲーム市場、ゲームユーザーの広がりに合わせ、エントリーモデルから、今よりもさらに高スペックなハイエンドモデルまで、たくさんのお客様に購入していただけるような商品作り、市場作りを目指したいと思います。

本記事の内容については、サポートのお問い合わせ対象外となります。予めご了承ください。

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