ネットワークオーディオNAS「fidata」

発売前からハイエンドオーディオ業界で、話題になっていたネットワークオーディオサーバー(オーディオNAS)のfidata(フィダータ) 。発売日前に視聴の機会を得たので、内覧会+試聴会の会場へ足を運んできました。

オーディオシステムの構成

ハイエンドオーディオNAS「fidata」

※向かって左がHFAS1-S10(SSDタイプ Spanning 実効容量1TB)
※向かって右がHFAS1-H40(HDDタイプ Mirror 実効容量2TB)

パワーアンプ marantz 9S2
プリアンプ marantz SC-7S2
ネットワークプレイヤー LINN AKURATE/DS/K/2
スピーカー B&W CM10S2 MR

試聴比較方法

ハイエンドオーディオNAS「fidata」
オーディオNAS「Rock Disk for Audio」
NAS「HDL2-A」 (全てI-O DATA製)の比較

試聴した曲

ロッシーニ 歌劇 泥棒かささぎ 序曲

視聴するまでの正直な気持ち

正直なことを言うと「オーディオNASが変わるだけで、どこまで音が変わるのか?」「違いなんてわからないのではないか?」と思っていました。ましてやfidataと他のオーディオNASとは大きな価格差があります。その差を埋めるだけの価値を見いだせるのだろうかと感じていました。

際立った「fidata」の音の余韻と輪郭

実際視聴をしてみて 「fidata」の音は他の2つのNASと比べて全く違った音だと感じました。「fidata」と他とは明らかに音の余韻と輪郭が違い、その差は歴然でした。

スタートから素晴らしかったfidataの音

試聴したロッシーニの歌劇「泥棒かささぎ」は、スネアドラム(小太鼓)の音が向かって左のスピーカーから鳴って止まり、次に右のスピーカーから鳴って始まります。その表現は、同じスネアドラムでも全く違うもので、スタートのこの音が曲の良し悪しを左右すると言っても過言ではありません。

HDL2-Aの音は、スネアドラムの音が少しこもって聴こえました。その音はスティックを押しつけて叩いているように思えるほどでした。次に、Rock Disk for Audioですが、さすがオーディオNASのスタンダードというだけあり、スネアドラムの音がクリアで、HDL2-Aと比較して、余韻が感じられました。音も鮮明です。これでも十分良い音だと感じました。

そして「fidata」。結論からいうとfidataは別格でした。スネアドラムの叩き出しの音、止めた時の余韻。次に聴こえる全く違う表現でのスネアドラムの音。その表現の差がはっきりわかり、スネアドラムの胴の鳴り、音の高低など、その深さは、私の耳でもはっきりと違いがわかりました。

圧巻なのは、スネアドラムの音だけではありません。次に聴こえてくるティンパニーや、シンバルの音も全く響き方が違います。特にティンパニーの音の違いは、fidataが群を抜いてました。その鳴りからは、演奏者がどんな強さで叩き、どこまで音を残していようとしているのか、その息遣いがはっきりとわかりました。もちろん、管楽器・弦楽器の音も同様に、鳴り方が違って聴こえます。

また、fidataから奏でる音は、単に「低音」という一つの音がドンと聴こえてくるのではなく、下の深い所まで音を再現してくれているように感じます。当たり前のことですが、同じ低音でも、楽器によってその音(音幅・音域)は違います。fidataは、その楽器それぞれから出てくる音の違いもわかり、それでいて音全体の迫力もある。ハイエンドオーディオサーバーに相応しい音だと感じました。

fidataのこだわり

fidataはイタリア語で「信頼に値する」という意味。内覧会でも「究極の音を目指して、その想いを込めて名付けられた」と説明がありました。

fidataはオーディオ機器の流儀で設計されたオーディオNAS

fidataは、なぜ他のNASと違って音が良く感じられたのか?それが私の素朴な疑問でした。そのことについて担当者に話を訊くと返答がありました。「fidataはオーディオ機器の流儀で設計しています。IT機器にとって電気とは、機器が動作するのに必要な電圧、電力が供給されてグランド処理すれば良いので、これではLANケーブルを通して、プレイヤーにノイズを大量に送りつけてしまいます。逆にオーディオはノイズを最小限に抑え、高精度に動作するように、電気回路を最適化します。fidataはIT機器ではなく、オーディオ機器として最初から設計され、綺麗な電気信号を送れるように施されているからこそ、良い音を実現できるのです」と話してくれました。

では、「オーディオ機器の流儀」とは何を意味するのでしょうか?
内覧会の時に説明があったことを振り返りながらまとめてみたいと思います。

徹底的なノイズ対策と伝送品質にこだわった回路設計
ハイグレードパーツを随所に搭載

まずは筐体。高剛性のフルメタル筐体で、4.0mm厚のアルミ天板、底面には2.3mm厚・2.2kgのベース鋼板を採用。振動に対する安定性を確保しています。

シャーシ内部をT字構造にし、電源・基盤部とストレージ部の2室構造にすることで、ストレージからの放射ノイズを低減しています。

また、フローティング構造を採用し、本体とマウンターの間には高減衰特性の樹脂を用いた低強震「クアッドダンパー」を挿入、ハードディスクからの振動を大幅に低減しています。さらには、独自設計のインシュレーターを採用。重量ある筐体をしっかりと保持しています。

さらには、重量ある筐体をしっかりと保持する、独自設計のインシュレーターを採用しています。

回路設計にもこだわりが施されています。まず、メイン基板のシステム部とストレージの電源生成回路は完全分離。ハードディスクからの電源ノイズがシステム部に混入することを防いでいます。

また、パターン設計を最適化し、グランドを1点で底面ベース鋼板に落とす1点アース方式を採用。インピーダンスを排除し、ゆらぎのない電源生成を実現し、システム全体の電圧を安泰させることでノイズの発生を低減します。

さらに、低位層雑音特性を持つ真空タイプの水晶発振器を搭載。クロックジッターを抑えるとともに、高精度水晶が生成するクロック動作で高精度なネットワーク伝送を実現しています。

電源部は高音質再生に重要な役割を担いますが、fidataは、メインユニット、ドライブユニットそれぞれに専用のTDKランダム製50W電源ユニットを搭載。システム部とHDD部の電源をユニット部から独立させることでノイズの混入を防いでいます。

LAN端子は信号端子が上になるように配置、また、14点固定のDIPタイプLANコネクターを採用しています。そのことにも理由があり、LANケーブルの端子と安定した接触を保てるようにし、コネクターと端子の揺れを防ぎ、振動による悪影響を防いでいます。

また、設定画面の操作で、LANポートの点滅・点灯によるノイズを無効にすることもできるなど、細かな配慮が施されています。

各パーツへのこだわり

こだわりは他の部品、設計にも及びます。

ヒートスプレッティングマウンター

ハードディスク搭載のHFAS1-H40には、アルミ製ヒートスプレッティングマウンターを採用。ヒートシンクによる効率的な放熱でドライブの安定動作と高信頼性を担保しています。

リフレクションシンメトリーレイアウト

搭載されている2台のハードディスクはシャーシ左右にバランスよくレイアウト。またドライブの回転方向やヘッドシーク動作も高い動きを打ち消し合うよう、あえて1台を反転させ、モーメント的に対称になるように配置しています。

リンクセパレーションシステム

「for Audio」(下写真 向かって左 ネットワークオーディオプレイヤーへの接続)と「for Network」(向かって右 ホームネットワークへの接続)の2つのLANポートを装備。fidataが生成する高品位な信号をプレイヤーに直接伝送できます。

3重のデータプロテクション環境

HFAS1-H40(4.0TB HDD)は実効容量2TBで同じデータを同時に2台のドライブに書き込むので大切な音楽ファイルを保護。別売りの外付USBハードディスクによる同期型バックアップにも対応。3重のデータプロテクション環境を備えています。

ほぼ無音のリスニング環境を実現するSSDタイプ

SSDタイプのHFAS1-S10には、高信頼性SSD「SAMSUNG社製850EVO」を2台搭載。電圧変動を抑制する3D V-NAND、対ノイズ性に優れたアルミ筐体を採用。850EVOは稼動部のないFlashストレージなので、ほぼ無音のリスニング環境を実現できます。

究極の音へのこだわり マスタークオリティの実現

筐体、部品、材質など、何かが変わるだけで、音は変わります。いま、ご紹介した「こだわり」は究極の音を求めたその試行錯誤の上、たどりついているように感じました。それが他のネットワークオーディオサーバーとは全く違った良い音として感じ取られた理由だと思いました。fidataはまさにハイエンドシステムに相応しい、オーディオサーバー(オーディオNAS)として、新しいオーディオの楽しみ方を提案できるものだと思います。それは、究極の音へ、マスタークオリティの実現に、欠かせないものとなっていくと思うのです。fidataの可能性が感じられた1日でした。今後が楽しみです。

◎関連リンク
fidata特設サイト
開発者ストーリー
fidata HFAS1-H40(4.0TB HDD)(購入ページ)
fidata HFAS1-S10(1.0TB SSD)(購入ページ)

本記事の内容については、サポートのお問い合わせ対象外となります。予めご了承ください。

このページのトップへ
PC版を表示