取材日:2020年12月22日
石川県金沢市立として唯一の、工業高等学校である金沢市立工業高校。専門高校として産業を支えるための、高度な教育を実践している同校では、学校環境づくりの一環としてICT化の取り組みについても積極的に推進しています。
同校で「らくらくボード」を利用した授業に取り組まれているのは、電子情報科で教鞭を執る渡邉知央先生と、就職指導部の部長であり、機械科の授業も担当する武田敬介先生です。また、水野勝正教頭に同席いただき、ICT化の取り組みについて広くお話を伺いました。
渡邉先生電子情報科では、電子系のものづくりの基礎から、回路設計や電子制御、情報通信について段階的に履修しています。1年では直流回路の基礎的な回路についての学習を行い、2年生では交流回路の基礎、3年生ではそれらの応用技術を学習します。このような、目に見えない電気・電子の世界を視覚的に表現するのに、「らくらくボード」が活躍しています。
武田先生機械科では、基本的な機械技術の修得と、それに関わる制御や電気について学びます。「らくらくボード」は、生徒に視覚的に動きを把握してほしいシーンで活用しています。例えば機械設計・歯車の項目では、PowerPointで作成したスライドをアニメーションで動かしたりしています。ビジュアルで一目瞭然に表現されますから、生徒の興味を喚起しやすいですね。
渡邉先生私は回路図を表示するのに重宝しています。生徒には自分の手で回路図を書く経験もしてほしいので、あえてプリントアウトを渡さず、書き取りしてもらうことがあります。このような時、あらかじめ用意したデータを「らくらくボード」上に表示して、手本にするのです。回答をクラスで共有する段階では、画面に表示された回路図にそのまま書き込みして解説し、さらに生徒に前に出てもらって、それぞれ書き込みながら発表してもらうこともありますね。
渡邉先生従来は回路図などを表示するのに、プロジェクターを使っていました。黒板に回路図を投影し、私が黒板上に書き込みながら説明をしていたのですが、時間も手間もかかっていましたね。私は図を書くのがあまり得意ではありませんので、上手に描けず生徒に笑われることも。「らくらくボード」なら、一瞬できれいに表示されます。はっきり美しいビジュアルで表示された回路図はわかりやすいですし、色分けなども簡単にできますから、生徒の理解につながっているようです。
武田先生従来は私もプロジェクターや拡大コピー、また板書を駆使して授業をしてきました。今では教室に設置されている大型TVを活用して、「らくらくボード」との併用も行っています。書画カメラで実際の歯車を撮影して大型TVに映し出し、一方「らくらくボード」ではスライドを表示するのです。実物の動きと解説の図を同時に見せることができて、非常に教えやすくなりました。教科書の履修内容を超えて、さらにステップアップした内容を教えることもできています。
渡邉先生インターネットを活用しています。例えば電磁誘導の授業では、実際に電磁誘導で動いているモーターの動画を見せました。インターネットにある教材になりそうな動画を見つけておいて、授業中に「らくらくボード」で再生して見せています。動画を一次停止して、その画面上に書き込みできる点もこの電子黒板のいいところですね。
武田先生私も授業に興味を持たせるために、インターネットで関連動画を探しています。機械設計の分野ですと自動車関連の学びも行いますが、有名な外国車の製造現場、ドリフトなどの動画は生徒受けがいいですね。動画の内容を授業に結びつけながら話しています。インターネットには話題や素材があふれていますから、うまく使いこなせれば可能性はぐんと広がります。授業後に行う生徒へのアンケートからも、「授業が始まってから終わるまで、ずっと興味を持ち続けることができた」など、わかりやすさを実感している様子が伝わってきます。
武田先生以前利用していた製品には、書き込みをした際の違和感が気になっていましが、「らくらくボード」にはそれがないですね。個人的には、もう少し反応が早くても構いませんが、十分活用レベルに達していると感じます。
渡邉先生数年前に利用経験がありますが、当時はまだ書き込み時のタイムラグなどが多発し、製品としては発展途上だったように思います。「らくらくボード」では、こうした問題はほとんどなく、書き込む時もまるで板書するかのようにスムーズに使えています。使い始めて日が浅いため、すべての機能を把握しているわけではありませんが、さらに使いこなせるようになれば、授業の運びも格段にスムーズになるのではと期待しています。
水野教頭授業の効率化により、生徒たちが思考するために費やす時間を増やしたいと思います。そのためICT化は必須の流れですが、全面移行ではなく、それぞれの良さを活かしたハイブリッドが理想ですね。アナログにはアナログの良さがあり、今まで大切に培ってきたものもありますので、バランスが大切と考えています。新しいもの、古くからあるもの、様々な機器や手法を織り交ぜて、先生方がそれぞれベストな手法を使い分けてくれればと。その1つの選択肢として、「らくらくボード」には大きく期待しています。