(開発秘話 後編)360度。遠くへ、強く、届ける。安全面やセキリュティにも配慮した無線LANルーター「WN-AX1167GR」

無線LANルーターWN-AX1167GR

(写真)360コネクト WN-AX1167GR

360コネクトを実現するオリジナルF型アンテナ
技術を極めた基板設計

F型アンテナは当社オリジナルです。2.4GHz帯と5GHz帯、それぞれ金型から製作しました。形状だけではなく、他からの影響を受けやすいF型アンテナですから、大きさ、取り付け位置にもこだわりを持って設計をしています。

2.4GHz帯のオリジナルF型アンテナ

(写真)2.4GHz帯のオリジナルF型アンテナ

5GHz帯のオリジナルF型アンテナ

(写真)5GHz帯のオリジナルF型アンテナ

その際、アンテナの位置だけを気にすれば良いのかと言えば、そうではありません。無線LANルーターそのものの大きさは、アンテナだけではなく、筐体のデザイン、コネクターの配置など他の要素を含めて決定していく必要があり、それゆえ、アンテナの配置位置、間隔、実際使う部品の配置など複合的に考え、決定していく必要がありました。また、熱への配慮も必要で、熱への配慮は商品そのものの大きさも制限してしまいます。それらを総合的に考慮しなければいけません。基板設計は今まで以上の試行錯誤を経て完成させました。

アンテナの位置のみではなく、基板全体を考慮し設計

(写真)アンテナ(赤囲み)の位置のみではなく、基板全体を考慮し設計

ダイポールアンテナを選択する場合は、電波が飛ぶ特性が非常にわかりやすいため、極端な話では場所を用意しておいて接続するだけとなりますが、F型アンテナは周辺部品などの影響を受けやすいため形状や配置には様々な制限を受け、期待する特性を得ることは非常に難しいのです。

ダイポールアンテナの電波の飛び方

(写真)ダイポールアンテナの電波の飛び方

開発時にはシミュレーションに加えて、試作段階での微調整を何度も繰り返して完成させました。またアンテナと部品の接続にケーブルを使用しないことも、今回の商品でこだわったポイントの一つです。アンテナに使用するケーブルはアンテナ自体につながっていることから性能に影響を与える危険性が大きく、位置が数ミリメートルずれただけでも大きく性能を悪化させる事例もありました。

今回は内部のケーブルを徹底的に排除し、プリント基板のパターンのみでアンテナと部品を接続しています。設計面での難易度は上がりますが、生産時のわずかのバラつきによる性能の変化も予防しています。仮に0.1%の確率であったとしても、お客様にLAN性能の不便はかけたくないとこだわりました。

360コネクト WN-AX1167GRは、基板上にある部品や周りの障害の影響を最小限に抑え、高性能なアンテナの能力を最大限に引き出す独自の工夫(チューニング)が施されています。

より遠くへ届かせるために考えられた基板
高性能パワーアンプも搭載

「電波がどのように出るか」というのはアンテナの仕事ですが、「どれくらい強い電波を出力するのか」というのは基板、部品の仕事になります。アンテナは、ご存知のように、信号を増幅するわけではありません。極論、ただ外に電波を出すだけです。

F型アンテナは無指向性のため、全方向で強い電波を維持しなくてはなりません。それは、一方向に強い電波を届けることより難しいのです。そういった面でも、基板設計も今まで以上に力を注ぎました。搭載するF型アンテナそれぞれに高性能パワーアンプを搭載したのもその一環です。全方位に遠くまで電波を飛ばしたいので、電波法を守れる範囲において、できるだけ強い信号をアンテナにいれるよう工夫を施しています。

高性能パワーアンプ

(写真)高性能パワーアンプ

このように360コネクト WN-AX1167GRには、電波を上下左右、そして全方位360度に遠くへ飛ばすためにあらゆる技術を搭載しています。商品ページにも3階建て家屋での実測検証結果を掲載していますが、スループット(転送速度)の測定と、電波強度の測定結果にもそれらのことが表れていると言えるのではないでしょうか。

熱対策で安全面も考慮

WN-AX1167GRでは、熱対策の面でも力を注ぎ、過剰にも不足にもならないバランスの良い設計を行っています。

本商品で最も発熱する部品はCPUです。CPUは880MHzのデュアルコアであることから大きく発熱します。

また5ポートのギガビットイーサーネットの機能も内蔵しており、以前のCPUとは比較にならないほどの発熱量があります。

このためCPUにはヒートシンクを取り付け、放熱効果を向上させています。後述する筐体設計の効果もあり、熱対策部品は最小限に、価格への影響を抑えることができています。

ヒートシンク(中央 黒い部分)。この下にCPUがある。

(写真)ヒートシンク(中央 黒い部分)。この下にCPUがある。

また、本商品は横置きにも対応していますが、横置きは縦置きと比較して内部に熱がこもりやすく熱設計の面では苦労した部分でした。実はもっと厚みを抑えて薄い商品にしたかったのですが、熱対策を考慮してこの大きさに決定しています。

併せて、横置きの時にもスタンド部品を使い、設置面に熱がこもらないような構造にしたり、放熱穴もデザインの観点から目立ちにくく、それでも最大限の効果を発揮できるような工夫をしています。

横置き

(写真)横置き

横置きにも設置台が取り付けられる

(写真)横置きにも設置台が取り付けられる

先に出てきたパワーアンプも熱をもつ部品の一つです。無線LANのICの内部にアンプは機能としてあるのですが、ここだけで増幅を集中させると熱くなるので、そうならないようにアンプは外につけて、分散させました。パワーアンプという部品一つをとっても、様々なことを考えて選択をしています。

外付けされた二つのパワーアンプが熱を分散

(写真)外付けされた二つのパワーアンプが熱を分散

発熱の問題は、お客様の安全面と直結することです。商品の熱でお客様に火傷などの怪我をさせるようなことがあってはなりません。また、発熱の影響で周りにあるお客様の持ち物に影響を与えてしまう恐れもあります。そもそも、熱いと商品そのものの寿命も短くなり、壊れやすくなります。電界コンデンサなどは特に熱が加わると寿命が短くなる特性があります。

電解コンデンサ

(写真)電解コンデンサ

そういった意味でも、熱設計は商品の性能以上に重要な事なのです。当社の商品は想定される最大動作状態においても安全に、かつ性能と寿命を維持できるよう十分に配慮して設計をしていますので、安心してお使いいただけます。

また無線部分以外にも基板の設計は信頼性に大きく影響します。細かい部品やパターンの配置一つで熱対策やノイズ対策にもなります。基板の設計が悪ければ対策のための部品が必要になるなど、コストアップにつながってしまいます。本商品では様々な部分にまで配慮して設計をして、ベストバランスを狙っています。無駄がないので、これだけの内容で、価格も十分に抑えられています。

セキュリティにも安心できる商品を

セキュリティ問題にも力を入れていきます。「ネットフィルタリング」などの機能はワンクリック・フィッシィング詐欺やウイルス配布サイトをブロックしてくれます。お子さんも無線LAN機器を使うことが増えていくことを考えれば、これらのセキュリティ問題も重要です。

ネットフィルタリング

(図)ネットフィルタリング

今後は、技術的に新しい商品、端末が増えてもストレスなく使える商品など新しい規格、IEEE802.11ad(60GHz帯)を用いた超高速の無線通信規格や、MU-MIMOなどに対応した商品も開発していきたいと思います。ご期待ください。

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◎関連リンク
無線LANルーター「WN-AX1167GR」(商品ページ)
無線LANルーター「WN-AX1167GR」(特集ページ)
無線LANルーター「WN-AX1167GR」(購入ページ)

本記事の内容については、サポートのお問い合わせ対象外となります。予めご了承ください。

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