Macのデータ保存先に適したNAS比較(LinuxNAS、WindowsNAS)

左からLinuxNAS、MacBook Air、WindowsNAS

(写真)左からLinuxNAS、MacBook Air、WindowsNAS

(記事公開日:2025年7月9日)

写真や動画、デザインデータなど、日々の作業で大量のファイルを扱うMacユーザーにとって、ストレージ不足やデータのバックアップは避けて通れない課題です。iCloudや外付けHDDといった選択肢もありますが、高速かつデータの共有がしやすい環境を整えたいと考えたとき、有力な選択肢となるのがNAS(Network Attached Storage:ネットワーク対応ストレージ)です。

一口にNASといっても、OSには「Linuxベース」と「Windowsベース」があり、どちらがMacに向いているのかは意外と知られていません。設定のしやすさやTime Machineとの相性、ファイル共有の快適さなど、NASの種類によって使い勝手は大きく異なります。

Macユーザーの視点からNASの導入メリットと課題を整理し、実機を使った検証によって「LinuxNAS」と「WindowsNAS」の違いを見ていきたいと思います。安心して使えるファイル共有や、バックアップ環境のために、あなたに最適なNAS選びのヒントをお届けします。

MacユーザーがNASを使うメリット

Macユーザー

(写真)Macユーザー

Macユーザーにとって、クリエイティブな作業に使用されるMacBookやiMacは、高性能でスタイリッシュなデザインが魅力ですが、内蔵ストレージの容量は控えめな構成が多く、写真・動画・音楽・プロジェクトファイルが蓄積していくと、あっという間に容量が圧迫されます。この課題を解決する手段の一つがNASの導入です。

内蔵ストレージの容量不足

(イメージ)内蔵ストレージの容量不足

NASを使う最大のメリットは、ネットワーク経由でアクセス可能な大容量ストレージを自宅やオフィスに構築できる点です。特にMacユーザーにとって重要なのが、Apple純正のバックアップ機能「Time Machine」との相性。Time Machineは自動で定期的にMacのデータをバックアップする機能ですが、すべてのNASがスムーズに対応しているわけではありません。

また、NASの導入により、(1)容量の拡張、(2)データの自動バックアップ、(3)グループやチームメンバーとのデータ共有、といった3つの大きなメリットを享受できます。これらは、Macの利便性と安全性を一段引き上げる存在として、非常に有効な選択肢と言えるでしょう。

Macユーザーが抱えるNASの課題

Macユーザーが抱えるNASの課題

(写真)Macユーザーが抱えるNASの課題

一方で、NASを使いこなすにはいくつかの課題もあります。たとえば、Finder経由でのファイルコピーに時間がかかる、という声はよく耳にします。特に動画や高解像度画像などの大容量ファイルを扱うユーザーにとっては、実用的な速度が得られないとストレスの原因になります。

また、日本語ファイル名が文字化けするトラブルも無視できません。これはNAS側の文字コード設定とmacOSの仕様が一致していない場合に起こりやすく、作業の妨げになることも。

さらに、Time Machineによるバックアップが途中で止まる・認識しないといった不安定な挙動も、ユーザーによっては大きな悩みの種です。NASごとにTime Machine対応状況は異なり、設定の手間や知識が求められることもあります。

また、フォルダーごとに使用可能な容量を制限する「クォータ機能」の管理が難しいと感じる人も多く、特に複数ユーザーが共用する環境では、ストレージの最適な割り当てが求められます。

実機で検証!LinuxNAS vs WindowsNAS

検証した構成

(イメージ)検証した構成

こうした課題を解決するため、今回はMacBook Airを使用し、LinuxベースのNASとWindowsベースのNASを実際に接続して比較検証を行いました。接続構成は、MacBook Air → スイッチングハブ → NAS機器という標準的なネットワーク環境です。

MacBook Airは、有線ポートを搭載していないので、Type-C接続5GbE対応のLANアダプターを使います。スイッチングハブは10GbE対応で5GbEや2.5GbEも使えるマルチギガビット対応です。

検証に使用した機器は以下の通りです。

Type-C接続5GbE対応のLANアダプター「GP-CR455GH/S」

(写真)Type-C接続5GbE対応のLANアダプター「GP-CR455GH/S」

以下の検証項目を比較しました。

  • ベンチマークソフトで転送速度を測定
  • Finderによるデータ転送速度と文字化けの有無
  • Time Machineのバックアップ速度と安定性
  • クォータ設定による容量制限・Time Machineバックアップの自動削除

ベンチマークテストで使用した計測ツールには、転送速度測定用ソフトの「AmorphousDiskMark」、バックアップ時間の計測にはストップウォッチを用いました。

検証結果と考察

ベンチマークソフトで転送速度を測定

(写真)ベンチマークソフトで転送速度を測定

まず、それぞれのNASを利用できるようにセットアップします。セットアップについては、I-O DATA MAGAZINEでご紹介していますので、ご参照ください。

NASの専用アプリ「LAN DISK CONNECT」を起動すると、Finderで利用できるようになった2つのNASが確認できます。

MacBook Airに認識されている2台のNAS

(キャプチャー)MacBook Airに認識されている2台のNAS

まず、はじめに、ベンチマークソフト「AmorphousDiskMark」を使って、それぞれの転送速度を測定しました。LinuxNAS「HDL2-HA4B」は読み込み468.16MB/s(約3,745Mbps)、書き込み116.45MB/s(約932Mbps)の結果でした。

LinuxNAS「HDL2-HA4B」のベンチマークテスト結果

(キャプチャー)LinuxNAS「HDL2-HA4B」のベンチマークテスト結果

WindowsNAS「HDL2-Z22WATB04」は読み込み271.96MB/s(約2,176Mbps)、書き込み105.31MB/s(約842Mbps)の結果でした。

WindowsNAS「HDL2-Z22WATB04」のベンチマークテスト結果

(キャプチャー)WindowsNAS「HDL2-Z22WATB04」のベンチマークテスト結果

どちらのNASも、企業のファイルサーバー用途として、十分に高速と言える結果となりました。

次に、Finderを使用したファイルコピーの転送速度を測定しました。合計1.41GBの容量のデータをコピーしました。

合計1.41GBのデータ容量

(キャプチャー)合計1.41GBのデータ容量

転送時間はLinuxNAS「HDL2-HA4B」では1分4秒、WindowsNAS「HDL2-Z22WATB04」では1分11秒となりました。どちらもスムーズな作業感が得られ、大きなファイルにおいても安定した転送速度を見せ十分実用的です。

次に、文字化け問題について。LinuxNAS、WindowsNASのどちらも文字化けは確認されず、Macとの親和性が高い結果となりました。

LinuxNAS「HDL2-HA4B」へのコピー

(キャプチャー)LinuxNAS「HDL2-HA4B」へのコピー

WindowsNAS「HDL2-Z22WATB04」へのコピー

(キャプチャー)WindowsNAS「HDL2-Z22WATB04」へのコピー

次に、Time Machineが利用可能なLinuxNAS「HDL2-HA4B」で、バックアップをしてみました。初回の全体バックアップでは、約30GBのデータを約18分でバックアップが完了しました。

2回目以降の前回から変更・追加されたファイルのみのバックアップでは、約1分程度でした。いずれも失敗することなくバックアップされていることを確認できました。

LinuxNAS「HDL2-HA4B」へTime Machineでバックアップ

(キャプチャー)LinuxNAS「HDL2-HA4B」へTime Machineでバックアップ

Time Machineは、バックアップ先のNASに制限がない限り「最大限使おうとする」設計なので、NAS容量がどんどんひっ迫していきます。NAS側でクォータ機能(フォルダー容量制限)を設定したうえでTime Machineを利用することで、容量制限を超えると古いものが自動削除されていきます。実際に検証した結果、古いものが削除され、新しいものがバックアップされることを確認できました。

オススメのアイ・オーNAS

以上の検証結果を踏まえると、MacユーザーにとってどちらのNASが適しているかは、使用目的や利用人数によって分かれます。

LinuxベースのNASは、検証により高速なデータ転送性能が確認されており、大容量ファイルのやり取りでも安定しています。また、macOSのTime Machineとの相性も良く、自動バックアップや復元がスムーズに行えるため、小~中規模の環境に適しています。

一方、WindowsベースのNASは、Active Directoryと連携したアクセス権限管理が可能で、社内ポリシーに沿った運用がしやすい点が特長です。また、Microsoft Defenderが標準搭載されており、導入直後から基本的なウイルス対策が可能です。さらに、既存のWindows向けセキュリティソフトや管理ツールをそのまま活用できるため、大規模環境に適しています。

WindowsNAS「HDL2-Z22WATBシリーズ」に標準搭載される「Microsoft Defender」

(キャプチャー)WindowsNAS「HDL2-Z22WATBシリーズ」に標準搭載される「Microsoft Defender」

「Microsoft Defender」によるウイルス対策

(キャプチャー)「Microsoft Defender」によるウイルス対策

10GbE対応 2ドライブ LinuxNAS「HDL2-HABシリーズ」
Linuxベースで構成されており、動作が軽快でシンプルなUIを備えています。大規模オフィスでの利用にも向いており、クリエイティブ用途(動画編集・大容量素材管理)にも適しています。

10GbE対応 2ドライブ LinuxNAS「HDL2-HABシリーズ」

(写真)10GbE対応 2ドライブ LinuxNAS「HDL2-HABシリーズ」

10GbE対応 2ドライブ WindowsNAS「HDL2-Z22WATBシリーズ」
Windowsベースで構築された多機能NASで、クォータ管理にも対応しており、ユーザーごとや共有フォルダー単位で使用容量の上限を細かく設定することが可能です。これにより、社内で複数人が利用する場合でも、ストレージの使い過ぎやトラブルを未然に防ぐことができ、安定した運用が実現します。特に、アクセス権限とあわせて管理を徹底したい法人利用においては、大きなメリットとなります。

10GbE対応 2ドライブ WindowsNAS「HDL2-Z22WATBシリーズ」

(写真)10GbE対応 2ドライブ WindowsNAS「HDL2-Z22WATBシリーズ」

NAS本体以外には、LANアダプターやスイッチングハブなどのネットワーク機器も、高速転送のためにNASとの連携をスムーズに保つうえで重要な役割となります。NASの性能を最大限引き出すには、ネットワーク環境の最適化も忘れてはならないポイントです。

あなたのMac環境に最適なNASを選ぶヒントとして、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。快適で安心なデータ運用の一歩を、今日から始めてみてください。

◎関連リンク
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本記事の内容については、サポートのお問い合わせ対象外となります。あらかじめご了承ください。

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