品質データは、信頼性まで示す時代へ ― 製造業で始める、タイムスタンプ・電子署名・eシールの活用

品質データを確認している技術者

(写真)品質データを確認している技術者

(記事公開日:2026年8月31日)

製造業では、検査成績書や品質証明書をはじめ、品質を証明する多くのデータ(以下、品質データ)がPDFやExcelで管理されているかと思います。こうした品質データを取引先との間でやり取りするうえで、内容だけでなく、「誰が承認したのか」「どの企業が発行したのか」「いつの時点から内容が変わっていないのか」といった信頼性を示すことも重要になっています。

本記事では、品質データの運用で起こりやすい課題と、「電子署名」「eシール」「タイムスタンプ」の役割、製造業での活用方法を紹介します。

検査結果の信頼性が、いま改めて問われる理由

ノートPCで検査成績書を確認している品質保証担当者

(写真)ノートPCで検査成績書を確認している品質保証担当者

検査結果は、出荷検査や受入検査、部品検査などを通じて日々生まれ、社内だけでなく、取引先との間でも電子的にやり取りされることが多いかと思います。多くの人やシステムを経由するなかで、受け取った検査成績書が正式版なのか、提出後に内容が変わっていないのかは、見ただけでは分かりにくくなりがちです。

さらに、生成AIをはじめとするデジタル技術の進歩により、品質データの編集や複製は以前にも増して容易になりました。そのため、「改ざんされていないことをどのように証明するか」という視点は、品質保証においてますます重視されています。

品質保証では、検査結果の内容だけでなく、電子データの真正性(発行元や作成者、存在時刻、付与後に内容が変更されていないことを確認できること)を支える仕組みへの関心が高まっています。

真正性を確認したい品質データ

対象となる品質データの例

(イメージ)対象となる品質データの例

ここまで検査成績書や品質証明書を中心に見てきましたが、真正性を確認したい品質データは、これらだけではありません。

出荷検査・受入検査・部品検査などの検査結果をはじめ、試験成績書・校正証明書・出荷判定書・不具合解析報告書、サプライヤーから提出される品質データ・検査PDFなども対象になり得ます。

自社の業務に置き換えて見ると、どこに確認が必要かが見えてきます。

品質データの信頼性を支える3つの仕組み

品質データの信頼性を支える3つの仕組み

(イメージ)品質データの信頼性を支える3つの仕組み

検査成績書や品質証明書などの品質データの信頼性を高める代表的な技術として、「電子署名」「eシール」「タイムスタンプ」があります。それぞれ役割が異なるため、用途に応じて使い分けたり、組み合わせたりして活用します。これらは品質データの信頼性を支えるための技術であり、製品品質そのものを保証するものではありません。

電子署名

電子署名は、「誰が文書を承認したのか」を証明する仕組みです。紙の契約書における署名や押印と同様の役割を果たし、検査責任者が検査成績書を承認したことを示す手段として利用できます。

eシール

eシールは、「どの企業・組織が発行した文書なのか」を示す仕組みです。電子署名が主に個人の承認や意思を示すのに対し、eシールは法人や組織を発行元として示す用途に適しています。品質証明書や試験成績書などに付与することで、企業や組織から発行された文書であることを確認できます。

タイムスタンプ

タイムスタンプは、「その時点で文書が存在していたこと」と、「付与後に内容が変更されていないこと」を証明する技術です。文書の存在時刻と非改ざん性を示せるため、品質監査や不具合調査において、どの時点のデータを根拠に判断したのかを説明する際にも役立ちます。

※認定タイムスタンプ:総務大臣の認定を受けた時刻認証事業者(TSA)が発行するタイムスタンプです。時刻の正確性と非改ざんについて、国の制度に基づく信頼性の裏づけがあります。

電子署名・eシール・タイムスタンプの役割比較表

電子署名・eシール・タイムスタンプの役割比較表

検査成績書で見る活用イメージ

検査結果の作成から保管・検証までの業務フロー

(イメージ)検査結果の作成から保管・検証までの業務フロー

電子署名やeシール、タイムスタンプは、検査成績書の作成から承認、発行、提出、保管までの一連の業務の中で活用できます。

多くの現場では、出荷検査後に検査担当者が結果を取りまとめ、検査責任者が内容を確認・承認したうえで、企業として正式な検査成績書を発行し、取引先へ提出します。

この流れに電子署名、eシール、タイムスタンプを組み込むことで、例えば、検査責任者による承認時に電子署名、企業としての発行時にeシール、発行・保管時にタイムスタンプを付与するといった運用が考えられます。これにより、検査成績書の作成から保管までの各工程に、必要な証跡を残すことができます。

どの仕組みをどの工程で利用するかは、文書の用途や社内の運用によって異なります。社内で利用する文書と、取引先へ提出する品質証明書では、求められる要件が異なります。自社の運用や用途に合わせて、必要な仕組みを選ぶことが大切です。

これらの仕組みは、いまの運用を活かしたまま、必要な文書から段階的に取り入れられます。

サプライチェーンで広がる活用効果

サプライチェーンにおける品質データの流れ

(イメージ)サプライチェーンにおける品質データの流れ

製造業では、一つの製品が完成するまでに、多くのサプライヤーや協力会社が関わります。それに伴い、企業間でやり取りされる検査成績書や品質証明書などの品質データも増えているのではないでしょうか。そこでは、受け渡すデータの内容が信頼できることまで示せるかどうかが、品質保証で問われるようになっています。

一例として、サプライヤーから提出された品質証明書について、正式な発行元による文書であり、提出後に変更されていないことを確認できれば、品質確認や受入検査をより円滑に進められます。

一方、自社も取引先から見れば、品質データを提出し、評価される側です。自社が発行する検査成績書について、誰が承認し、どの企業が発行した文書なのか、発行後に変更されていないかを客観的な証跡として示せれば、取引先から品質管理体制について説明を求められた際の根拠として活用できます。

また、品質監査や不具合発生時には、どの検査結果を基に出荷判断を行ったのか、当時の文書がそのまま維持されているのかを説明しなければならない場面があります。そうした際、客観的な証跡が整備されていれば、事実確認や原因究明もスムーズになります。

こうした場面で有効なのが、電子署名・eシール・タイムスタンプです。前述のとおり役割はそれぞれ異なり、複数を併用すれば、受け渡す文書の信頼性を裏づける情報になります。

これらの技術だけで製品品質そのものを保証できるわけではありませんが、文書の来歴や管理状況を把握できるようになり、品質監査への対応や取引先への説明を支えます。

サプライチェーン全体で品質データを共有・管理する機会が増えるなか、求められているのは「データを渡す」ことから「信頼できる情報を受け渡す」ことへと移りつつあります。

自社に合わせて無理なく始める方法

個別付与(ITS-Sign)とシステム組み込み

(イメージ)個別付与(ITS-Sign)とシステム組み込み

電子データの真正性というと、「全社システムを一度に刷新しなければ導入できない」と考えられがちです。しかし実際には、現在の運用を活かしながら段階的に導入することも可能です。

まずは、取引先へ提出する検査成績書や品質証明書などのPDF文書から運用を始める方法があります。アイオーデータの「ITS-Sign」は、Windows環境でPDFへ電子署名やタイムスタンプを付与できるアプリケーションです。あらかじめ設定したフォルダーへ対象ファイルをドラッグ&ドロップするだけで処理できるため、既存の業務フローを大きく変更することなく導入できます。

一方、品質管理システムやMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹業務システム)から大量の文書を自動発行している企業では、電子署名やタイムスタンプの機能をシステムへ組み込む方法もあります。検査成績書の発行と同時に真正性の情報を付与できるため、運用負荷を抑えながら効率的に活用できます。

最初からすべての文書を対象にする必要はありません。まずは出荷検査成績書や品質証明書など対象を限定して運用を開始し、効果を確認しながら適用範囲を広げていく方法も現実的です。

電子データの真正性は、いまの品質管理業務を活かしながら、品質データの信頼性をより確かにするための取り組みです。自社の運用に合わせて無理なく導入を進めることが、継続的な活用と定着につながります。

導入方法の比較表(個別付与「ITS-Sign」とシステム組み込み)

導入方法の比較表(個別付与「ITS-Sign」とシステム組み込み)

品質データは「信頼性まで証明できる状態」で管理する時代へ

工場内で品質データを確認する品質保証担当者

(写真)工場内で品質データを確認する品質保証担当者

検査成績書や品質証明書などの品質データは、品質保証活動に欠かせない情報資産です。電子化によって利便性は大きく向上しましたが、それと同時に、「誰が作成したのか」「どの企業が発行したのか」「提出後も内容が維持されているのか」を示せることの価値も高まっています。

これら3つを適切に組み合わせれば、文書の来歴や管理状況が明確になり、品質監査や取引先への説明、不具合発生時の事実確認といった場面で、信頼性を裏づける根拠になります。

導入方法は企業ごとに異なります。取り扱う文書の種類や発行件数、既存システムとの連携状況などを踏まえ、自社の運用に適した方法を選択することが大切です。

アイオーデータでは、認定タイムスタンプの提供をはじめ、電子署名・eシールと組み合わせた運用、Windowsアプリケーション「ITS-Sign」による個別利用、さらに業務システムへの組み込みまで、運用形態に応じた導入を支援しています。

品質データは、必要なときに信頼性まで示せる状態で管理してはじめて、価値を発揮します。

その信頼性は、製品そのものの品質と同じように、取引先からの信頼を左右します。電子データの真正性を見直すことは、品質保証体制を強くし、企業への信頼を高める一歩になります。

まずは、取引先へ提出する重要な文書の一つから、電子署名やタイムスタンプの付与を試してみることをおすすめします。導入方法に迷われた際は、ぜひお気軽にアイオーデータへご相談ください。

◎関連リンク
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・eシール対応電子証明書
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