(記事公開日:2024年7月12日)
ディスプレイに高精細で美しい映像を表示する技術のひとつに、HDRがあります。HDR対応ディスプレイも市販されているため、どのような特徴があるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、HDRの特徴や主な規格、対応ディスプレイを選ぶ際に知っておきたいメリット・デメリットを紹介します。HDR対応ディスプレイの購入を検討している方は、後悔を防ぐためにも、想定どおりの商品か事前にチェックするとよいでしょう。
高精細な映像を表示するための技術であるHDRとは、具体的にどのような技術なのでしょうか。ここでは、HDRの意味や特徴、従来のSDRとの違いを紹介します。HDRが登場した当時、多くのユーザーの注目を集めた背景もチェックしましょう。
HDRは「High Dynamic Range」の略で、ダイナミックレンジを広げてディスプレイ上に表示できる明るさの幅を拡大するための技術です。映像内の暗い部分はより暗く、明るい部分はより明るく表示できます。
白飛びや黒つぶれといった明るさのグラデーションが失われる現象を予防し、より鮮明で美しい映像を表示できるのが魅力です。ひとつの映像に明るい部分と暗い部分の両方があっても、細部まではっきりしたリアルな表現を楽しめます。
HDRが登場する以前から使われていた輝度を表現する技術をSDR(Standard Dynamic Range)と呼びます。HDRとSDRはそれぞれ、以下の明暗差・最大輝度を表現できます。
HDRは表現できる明暗差が大きいため、明るい部分と暗い部分が混在する映像でも美しく表示できます。
表現できる輝度の幅を広げることは、高画質の映像を楽しむために必要な要素のひとつです。HDRが登場した時点で、高解像度や高フレームレートといったハイクオリティな映像を楽しむための技術はすでに登場していました。
そこにダイナミックレンジを広げる技術であるHDRが登場したことで、よりリアルな映像を表示できるようになったのが、当時HDRが多くのユーザーの注目を集めた背景です。
HDRにはさまざまな規格があり、規格によって目的や表現できるダイナミックレンジが異なります。ここでは、代表的な規格として「HDR10」「HDR10+」「Dolby Vision」「HLG」の4つを見てみましょう。
HDRの基本的な規格として知られているのが「HDR10」です。明暗差を10bitで表現することから、このように呼ばれています。
HDRで表現できる最大輝度は10,000cd/m2で、SDRの上限である100cd/m2に比べると明るい部分を鮮明に表示できるのが魅力です。光源のような周囲より明るい部分をより正確に表現でき、SDRに比べてリアルな映像を楽しめます。
基本規格であるHDR10を拡張した規格が「HDR10+」です。輝度情報を含むメタデータをシーンごとに変更し、自動で輝度を調整するダイナミックメタデータに対応しています。それにより、明るい部分が本来の明るさより暗く表示される現象を予防できるのがメリットです。
なお、HDR10+には後方互換性があり、HDR10に対応した映像機器であればHDR10+の映像を再生できます。HDR10の映像をHDR10+に対応した映像機器で再生することも可能です。
Dolby Visionは表現できる明暗差を12bit(4,096段階)に拡大することで、より自然な映像を表示するHDRの規格です。最大輝度は10,000cd/m2で、HDR10やHDR10+と差はありません。
映画やVODサービス、ゲームで広く採用されており、明暗差が拡大した分、より美しい映像を楽しめます。ただし、Dolby Visionを生かして制作した映像コンテンツを本来の画質で楽しむには、対応したディスプレイが必要です。
テレビ放送や中継に使用することを目的に開発し、少ないデータ量で高画質の映像を伝送することを実現した規格がHLGです。明暗差は10bit、最大輝度は10,000cd/m2で、基本的な仕様はHDR10と共通しています。
使用するディスプレイに合わせた映像が表示されるのもHLGの特徴です。そのため、SDRにしか対応していないディスプレイでも視聴でき、汎用性が高いのが魅力といえるでしょう。
HDR画質の映像を楽しむには、HLGに対応したディスプレイが必要です。HDR10やHDR10+、Dolby Visionにしか対応していないディスプレイでは、HLGで制作された映像を本来の画質で楽しめません。
高画質な映像が楽しめるHDRには、メリットだけでなくデメリットもあります。新たにHDR対応のディスプレイを購入する方は、メリット・デメリットを事前に確認し、自分に合った商品かどうか判断しましょう。ここでは、主なメリット・デメリットを2つずつ紹介します。
HDRはダイナミックレンジが広く、明暗の差をはっきりと表現できるため、より肉眼で見たときに近い自然な映像を表示します。ただし、肉眼で認識できるダイナミックレンジはさらに広く、肉眼同等というわけではありません。
映像コンテンツを制作するクリエイターにとって、自然な映像に仕上がるのは大きなメリットといえるでしょう。視聴者もより自然で見やすく、美しい映像を楽しめます。
HDR技術を活用することでハイクオリティな映像に仕上がれば、視聴時の没入感が高まります。映画をはじめとした映像コンテンツを楽しみたい方にとって、うれしいポイントといえるでしょう。
高画質な映像を楽しみたいなら、HDRに対応したディスプレイがおすすめです。さらに高解像度に対応した商品を選べば、よりクオリティの高い映像を視聴できます。
視聴者がHDRディスプレイを用意しても、映像コンテンツがHDRで制作されていないとハイクオリティな映像が楽しめません。すべての映像コンテンツがHDRで制作されているわけではなく、SDRで制作されているものもあります。
そのため、視聴する映画やプレイするゲームによっては、HDRディスプレイの性能をフルに発揮できないケースがあることを覚えておきましょう。VODサービスの中にも、HDRとSDRが混在しています。
PCをはじめとした出力側のデバイスとディスプレイを接続するケーブルは、HDR対応の商品にする必要があります。HDRに対応していないケーブルで接続すると、HDRのコンテンツでも本来の画質で表示されません。
HDMIやディスプレイポート、USB Type-Cといったいくつかのディスプレイケーブルがありますが、どの種類を使用する場合でもHDRに対応したものを選びましょう。対応しているケーブルは以下のとおりです。
手持ちのケーブルがHDRに対応していない場合、HDR対応ディスプレイを購入した機会に交換するとよいでしょう。
市販されているHDR対応ディスプレイの性能を評価する目的で広く使われているのが、DisplayHDRという性能指標です。液晶ディスプレイと有機ELディスプレイでは特性が異なるため、それぞれの特性に応じて指標も分かれています。
ここでは、液晶ディスプレイと有機ELディスプレイそれぞれの性能指標を見てみましょう。なお、いずれも映像機器の標準規格を策定するVESAが定めた規格です。
液晶ディスプレイの性能指標は、DisplayHDR 400~DisplayHDR 1400の5段階に分けられています。それぞれの認証を受けるために必要な性能 は以下のとおりです。どの指標の基準に達しているかによって、表示できる映像のクオリティは異なります。
指標の名称 | 最小ピーク輝度 | 全白輝度 | 色域(DCI-P3) | コントラスト比 |
---|---|---|---|---|
DisplayHDR 400 | 400cd/m2 | 320cd/m2 | 90% | 1,300:1 |
DisplayHDR 500 | 500cd/m2 | 320cd/m2 | 95% | 7,000:1 |
DisplayHDR 600 | 600cd/m2 | 350cd/m2 | 95% | 8,000:1 |
DisplayHDR 1000 | 1,000cd/m2 | 600cd/m2 | 95% | 30,000:1 |
DisplayHDR 1400 | 1,400cd/m2 | 900cd/m2 | 95% | 50,000:1 |
有機ELディスプレイは液晶ディスプレイより全白輝度を上げにくいため、性能指標もピーク輝度に比べて全白輝度が低く設定されているのが特徴です。コントラスト比の基準がないのも、液晶ディスプレイと異なる点です。
有機ELディスプレイ向けの性能指標は、以下の3つに分かれています。
指標の名称 | 最小ピーク輝度 | 全白輝度 | 色域(DCI-P3) | コントラスト比 |
---|---|---|---|---|
DisplayHDR TRUE BLACK 400 | 400cd/m2 | 250cd/m2 | 95% | 基準なし |
DisplayHDR TRUE BLACK 500 | 500cd/m2 | 300cd/m2 | 95% | 基準なし |
DisplayHDR TRUE BLACK 600 | 600cd/m2 | 350cd/m2 | 95% | 基準なし |
高精細な映像を楽しめるHDRディスプレイの代表的な2つの用途を紹介します。以下で紹介する用途を目的として新たなディスプレイの購入を検討している方は、HDRに対応した商品を選ぶとよいでしょう。
映画や動画といった映像コンテンツの鑑賞が趣味の方にとって、HDR対応ディスプレイは魅力的な商品です。映画や動画の中にはHDRで制作されたものもあり、そのような作品を鑑賞するときはHDRディスプレイの性能を十分に発揮できます。
ただし、すべての映画や動画がHDRに対応しているわけではありません。鑑賞する作品によってはSDR画質になることも覚えておきましょう。
ゲームプレイを目的としている方にもHDR対応ディスプレイがおすすめです。特に、シミュレーションゲームやRPGのようなグラフィックを重視したゲームをメインにプレイする方に向いています。
できるだけ高画質でゲームを楽しみたいのであれば、ディスプレイもHDRに対応した商品を選びましょう。
ただし、映画と同様にすべてのゲームタイトルがHDRで制作されているわけではありません。SDRで制作されたゲームをプレイする場合、HDR対応ディスプレイの性能を十分に発揮できないため注意しましょう。
リフレッシュレートとは?フレームレートとの違いとディスプレイ選びのコツ
HDR対応ディスプレイを購入するなら、ぜひアイ・オー・データのGigaCrystaをご検討ください。ゲーミングディスプレイブランドのGigaCrystaは、HDRに対応した商品やゲームを快適にプレイできる機能を搭載した商品など、高性能なディスプレイを数多く販売しています。
GigaCrystaブランドのディスプレイは、HDRの基本規格「HDR10」に対応しています。HDRに対応したPCやゲーム機を接続し、対応したコンテンツを表示すれば、明暗がはっきりした高精細な映像を表示できるのが魅力です。
特にゲームプレイでは、白飛びや黒つぶれを防いで明るい部分と暗い部分をはっきりと表示することで視認性が高まり、有利なプレイにつながります。
映画鑑賞からゲームプレイまで幅広く使えるディスプレイを探している方は、ぜひHDR10に対応したGigaCrystaをご検討ください。
ディスプレイのちらつきを減らして目の負担を軽減するフリッカーレス機能や、ブルーライトを低減するブルーリダクションなど、長時間のゲームプレイを快適にする機能を搭載しているのもGigaCrystaの魅力です。
長時間のゲームプレイで疲れ目といった症状に悩んでいる方は、負担を軽減する機能を搭載したGigaCrystaのディスプレイをおすすめします。
FPSやアクションゲーム、RPGなど、ゲームのジャンルによって適したディスプレイは異なります。FPSには、リフレッシュレートが高く応答速度が速い商品がおすすめです。RPGやシミュレーションゲームがメインであれば、画質を重視した商品を選ぶとよいでしょう。
GigaCrystaでは、さまざまなジャンルのゲームに対応できるように多種多様なゲーミングディスプレイをラインアップしています。ぜひ自分が必要とする仕様・機能を備えた商品をお選びください。
ゲームをより快適に楽しむためにこだわったブランド。プレーヤースキルを さらなる高みへ
HDRは、ダイナミックレンジを広げて、明るい部分と暗い部分をよりはっきりと表示する技術です。白飛びや黒つぶれを防止し、より肉眼で見た状態に近い映像を表現できます。
映画鑑賞やゲームプレイを目的にディスプレイを購入したい方には、ハイクオリティな映像を楽しめるHDR対応ディスプレイがおすすめです。
アイ・オー・データのGigaCrystaはHDRに対応し、コンテンツが対応していれば美しい映像を楽しめます。FPS向けやMMORPG向けなど、さまざまなディスプレイをラインアップしているため、自分がプレイするゲームに適した商品をご検討ください。
I-O Knowledgeコラム 編集部では、液晶ディスプレイとHDD&NASのストレージデバイスを中心に、IT業界に関わる基礎知識と最新トレンド情報を選りすぐりでお届けします。
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